インフル予防接種、奨励される理由・・・?

投稿者: | 投稿日時: 2009年10月14日 03:43

今日は要するに、小さなギモンです。
インフルエンザの予防接種を奨励しているのは、結局誰か、誰のためか、ということ。


というのも、私たち母子が週末に季節性インフルエンザの予防接種を受けていたちょうどその頃、元国立公衆衛生院疫学部感染症室長の母里啓子氏と大阪赤十字病院小児科の山本英彦氏の2人の医師が、「ワールド・ブロガー協会」の席で、気になる発言をしていたようです。

●感染症対策の専門医がインフルエンザワクチン接種に警鐘=ワールド・ブロガー協会第3回取材会で(PJ NEWS 009年10月13日)


趣旨としては、政府の新型インフルエンザワクチン接種推進策およびマスコミの姿勢に対する批判だったとのことですが、その前提となるいくつかの指摘が、ちょっと気になってしまいました。

読んでみると、この二人の医師は、どうやらインフルエンザワクチンの効果等について以前からずっと懐疑的なスタンスを取ってきたようです。母里氏など、過去には自ら調査に加わり、ワクチンの無効性と副作用の危険性を明らかにした結果を発表しています。そのことがひとつのきっかけとなって1990年代、学校での義務接種の廃止にもつながっていったようです。


そういえば確かに私が小学生の頃は学校でインフルエンザの予防接種を受けていました。しかし副作用が社会問題となり、中学生になると「受けないほうがよい」というイメージさえ先行するようになっていたように思います。ところがここ数年、ワクチンはまた「受けておいたほうがいい」ものという感覚が定着してきているように思います。それで私もなんとなくここ数年、毎年3000円を自費で負担して医療機関で接種を受けているわけです。


それについて上記の医師は、接種が義務でなくなってから、インフルエンザによる高齢者の死亡や子どもの脳症・脳炎についての新聞報道が増え出し、「ワクチン需要研究会という検討会があり、どう宣伝したら子供が打ってくれるか議論している」と指摘しています。これはどうやら厚労省の医薬品部局が開いている「インフルエンザワクチン需要検討会」のことらしいですが、公開されている資料(たとえば昨年のものはこちら)からは、そうした論調までは読み取れませんでした。資料から分かることは、この検討会では1997年代後半から、次のシーズンにワクチンがどれだけ必要になりそうか、医療機関等調査と世帯調査によって毎年予測を立て、その後検証、という作業を続けてきているのだということ。


上記資料中で素人目にも面白かったのは、資料A:インフルエンザワクチンの需要に関する研究(埼玉県立大学三浦宜彦教授)にある「図1 接種率の年次推移と20年度接種率予測」です。そこにあるのは平成12年からの数値ですが、各世代の接種率・使用量の伸びは現在までに3~5倍以上にもなっています。その年ごとに、たとえばSARSや鳥インフルが社会問題化した年は増えたりと、接種率・使用量は社会的な風潮にもかなり左右されるようですが、確かに接種がほぼ右肩上がりで増えているのは明らか、とくに未就学児・小学校児童の年代で顕著です。


ためしに他の年の資料も見てみると、平成16年他の資料には、毎年のワクチン製造量の推移のグラフがありました。まず目を引くのは平成5(1993)年→平成6(1994)年のところでがくんと製造量が落ちていること。これはちょうど学校での義務接種終了と重なる数字です。グラフを見るとそれまでにも製造量は減少傾向でしたが、ここで突然15分の1以下になっています。そして次に目に付くのは、未使用量の割合です(それについては平成7年分からしかわからないのですが)。見ると、途中3年連続で実際の使用量が製造量をかなり下回ったものの、その他の年には大きな過剰もなく不足なくワクチンが用意されてきたことがわかります。


そしてこのグラフの載っている資料には、「昨シーズンの経験にもとづき、次シーズンのインフルエンザワクチンの安定供給に関する対応策は、以下のとおりとする。なお、厚生労働省は、これらの内容を都道府県、日本医師会、国公立病院、製造業者等の関係者に周知する」として、都道府県、製造業者及び販売業者等、医療機関の実施すべき役割が記されています。そこでは例えば、各都道府県は「すべての医療機関に対し、返品による弊害を周知し、返品を行わないよう協力を求める。また、製造業者、販売業者及び卸売販売業者に対し、返品制度の改善を求める。なお、状況によっては、厚生労働省は多量にワクチンを返品した医療機関名を公表することも検討する」、製造業者・販売業者は「医療機関に対しては、全体の初回注文量が製造量を上回るような場合、実際の納入量は注文量を下回ることを伝え、過剰な注文とならいよう協力を求める」、そして医療機関は「上記内容に協力する」といったことが盛り込まれています。


これを読むと、医療機関にとってはけっこうなプレッシャーになりそうな気もしてきます。返品はよろしくない、ペナルティーとして名前が公表される、となれば、ワクチン製造業者・販売業者と一体となってさかんに宣伝し、接種を薦めることにもなるのでは、と思ってしまいます。(もちろん一応、厚労省の実施要綱には、「接種を受ける法律上の義務は無く、かつ、自らの意思で接種を希望する者のみに接種を行うものであることをあらかじめ明示」とはありますが。)予測の信憑性を高めることは、確かに国民にとっても大切です。ワクチンを接種したいのに足りない、という事態は困ります。そのための統制だとは分かります。


ただ、ここで思い出すのが、冒頭の2人の医師の発言です。

「インフルエンザはドル箱」(検査や予防接種、薬、マスク、アルコール消毒剤などでもうかる実態)。これから始まる新型ワクチンの接種は「1つの位置づけとしては人体実験」。「国内のワクチンメーカーは4社だが、規模は小さく、海外大手が日本の市場を狙っている。外国にとって4000万人が打ってくれたらいい市場だ。今がチャンスと思っているはず」と指摘した。


こうした側面も、確かにそうなのかも、と思わずにいられません。それでつい、最初に挙げたギモンがでてきてしまう、というわけです。誰の視点から、真に誰のための奨励策なのか、やっぱりそこにはいろいろ「大人の事情」も絡んで来ざるを得ないというわけなんでしょうね・・・。

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コメント

堀米様

このブログ記事では、何をおっしゃりたいのでしょうか?
国内製薬メーカーの利益確保のために、返品へのペナルティをツールとして産官民による接種励行が行なわれているということでしょうか。

インフルエンザワクチンの需要が伸びたことが疑問なのでしょうか。
返品率が縮小していることが疑問なのでしょうか。

この記事を読んでも、何をおっしゃりたいのか私には理解できませんでした。
ただ、最後の段落で「真に誰のための励行策なのか」とかかれており、「真に誰」の部分に、国内ワクチンメーカーのためという事情も絡んでいると結ばれていると読みましたが、私の読解力不足でしょうか。

我が国のワクチンメーカーがインフルエンザワクチンによりその利益の多くを確保していることは事実ですし、国がその手助けをしているといわれれば、ウソとは言い切れません。

しかし、どれくらいの医師が「自国のワクチンメーカーのため」にワクチン接種を勧めているのでしょうか?
「小さなギモン」を感じられたのであれば、臨床でインフルエンザワクチン接種を推奨している医師たちに疑問をぶつけて見られてはいかがでしょうか?

ブログとはいえ、ロハス・メディカルの名が付くのですから、そのような裏付けをとった上で書いていただきたいです。

「大人の事情」がどの程度、励行の目的となっているのか触れられていませんが、読み手によって非常に大きな関与と感じるかもしれません。
このような、「定量的判断が可能となる情報を伴わない言説」が、ワクチンへの不信感を高めてきた大きな一因と私は理解しておりますので、非常に残念な記事です。

高畑紀一さま

まずはご理解いただいているとおり、このブログに関しては、ロハス・メディカルが独自に取材して掲載するニュース記事とは異なり、2次情報を基にした私見に基づくものであることは改めてご了承いただければと思います。それもあって今回は冒頭に紹介した記事から抱いた疑問(高畑さんと重なる部分もあります)について、それをそのまま書き連ねたかたちとなっていますが、しかし、いずれにしましても、ブログとはいえここに掲載することの責任を改めて痛感させていただきました。ご指摘いただいたことを肝に銘じて参りたいと思います。今後とも宜しくお願い申し上げます。


>非常に残念な記事です。

私も愛読者ですが全然残念じゃなかったです。お役所じゃないんだからブログ記事も読者コメントも十人十色であってこそ言論と批判の自由があって好ましく思います。

>2次情報を基にした私見に基づくもの

特に堀米記者の私見記事はパンデミック下の妊婦さんの実感がリアルタイムで綴られているのでいつも注目しています。どんどん今以上に「私見」をブログに書いて欲しいですね。

あと、ついでと言ってはなんですが、「官に頼らずとも公は創れる」ワンクリック100円募金を復活してほしい例のお願いを、この場を借りて済みませんがまた述べさせていただきます。

堀米さんのこの記事は、「インフルエンザで儲ける業者がいる」ということで「政治的癒着があるのではないか」という疑惑を率直に述べられたものです。
マスク業者がインフルエンザ騒ぎで儲けるのは、別にかまわないのではないでしょうか。消毒薬もしかり。良い物、必要な物は売れます。どんな商売にも好機到来ということはあり、逆に、そのときに製造を広げすぎたらあとで倒産してしまうかもしれず、リスクはつきものでしょう。普通の感覚では、インフルエンザ関連業者がインフルエンザを流行らせたのではない以上、結果として潤うことに別に問題はないのでは?
ワクチン業者もしかり。ワクチンなんて、いつも行政に振り回されて、儲かる医薬品ではないというのが個人的認識ですが、違うでしょうか。ワクチンは、病気を防ぐことができる、費用対効果の非常に優れた薬品で、医学史上最大の発明の一つでしょう。インフルエンザワクチンは鶏卵から製造するので原価が350円ほどかかり、流通マージンで医療機関の手に渡るときには1,000円ぐらいに跳ね上がり、それを医療機関は2-3千円で打って儲けを出すわけですが、卸をカットして安売りするスーパーみたいに流通革命を起こせばもっと安くなる可能性はあります。でも、製造業者はそんなに儲かっていませんよ。医者がサッと打つだけで千円以上も儲けるのはけしからんですか?予防医療というのは最も有効な治療なので、対価が高いのは当然ではないでしょうか。問診したり診察したり子供は押さえつけたり、きちんと手間ひまかけて安全を期して接種するわけですし。「予防は治療に勝る」と信じ、患者さんのためを思って勧めているのです。化粧品や健康食品と比べて、どちらにお金を払うのが自分の体に良いのか、ちょっと考えればわかっていただけると信じます。
本筋なのか脇にそれるのか見解は別れるでしょうが、堀米さんの感覚が日本人一般の感覚を代表しているとすると、それは、ワクチンに対する根強い誤解が日本を覆っているからではないでしょうか。日本ほどワクチンに対して懐疑的な議論が活発な国も珍しいでしょう。言論の自由は保証されているので、おおいに議論すべきですが、医学的には、病気にかかるより、予防接種で防ぐほうが良い事は、とっくに証明されていて疑問の余地はありません。その病気(たとえばポリオや麻疹)にかかってしまうと一定の確率で死んだり後遺症が残ったりする、そのリスクと、ワクチンによる副作用のリスクを比較すれば、一目瞭然なのですが、その、はるかに少ないリスクを許容できないことが不思議でたまりません。
ある母親が、「はしかに自然にかかって死んだら諦めがつくけれど、わざわざワクチンを打って、その副作用で死んだら、悔やんでも悔やみきれない、だから、自然に任せる」と言っているのを聞いたことがあり、そういう感性は想像もできなかったので、本当に驚きました。そういうことなのでしょうか。私たち医者の確率論は、一般の方たちには通じないのでしょうか。そうして、「儲かるから勧めるんだろう」と勘ぐられ痛くもない腹を探られるのでしょうか。
メディアの皆さんにも、ワクチン副作用悪者説流布の責任はあるように感じています。今回の新型インフルエンザ、鳥インフルエンザの騒ぎで、ワクチン恐怖症というか、ワクチンに対するバイアスが解け、「ワクチンとはなんて有難いものなんだろう」という、普通の感覚が定着することを、心から祈っています。

>メディアの皆さんにも、ワクチン副作用悪者説流布の責任はあるように感じています。

メディアはここ2,30年来厚生省の発表をそのまま素直に報道してきただけじゃないでしょうか。ワクチン副作用悪者説流布の責任は厚生省にあるでしょう、ただし善意で発表したこととは思いますが。

ようするに日本では非科学的行政が横行しているというのが私の見方です。

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