いまさら改めて書くまでもないのですが・・・。

投稿者: | 投稿日時: 2009年11月02日 03:12

前回、「ため息が出る」なんて振っておきながら、結局そこに話が至らなかった件、下記の話にほかなりません。

●新型インフル 「マスコミ報道に憤り。議論続け、逐語で公開を」 森兼氏
(2009年10月31日 ロハス・メディカル ニュース)

とはいえ、改めて確認してみたら、私がここで再度何を書くまでもなく、コメント欄に複数の方から経緯を振り返ったご指摘が書き込まれていました。


それにしても、こういう報道って氷山の一角なんですよね。

そう思う理由としてはやはり、これまでの報道やちょこちょこ漏れ伝わってくるウワサから、現在の厚労省内部の力関係にどうしても“危うさ”を感じてしまうからです。


特に今回のすったもんだについては、10月18日ニュース欄掲載
●新型インフル 「厚生労働省を信じてはいけない」
の中でも、

「こういう医系技官たちの暴走を、意外かもしれないが、前の舛添大臣はかなりストップしていた。ところが民主党に代わって制御が効かなくなったので今は医系技官がやりたい放題だ。舛添さんの時を100とすると長妻さんは10しかない。足立信也政務官が孤軍奮闘して50位まで引き上げているけれど、しかし最後は大臣次第なので、医系技官の暴走を止められていない。」

と描写されている厚労行政の内情が、そのまま反映されてしまった形、象徴的な出来事だなあと思わざるを得ません。今回のワクチン接種回数に関するひと悶着も、要するにもとはといえば「医系技官の暴走」だったということですよね。ワクチンが不足するという事態を懸念し、とにかく国民をなだめるような方策を一刻も早く打ち出さねば、厚労省の権威にかかわると考えたのでしょうか。そしてそれに飛びついた大手メディア、というわけなんでしょう・・・。


それに、確かにこうした一連のインフル報道で、長妻厚労大臣の影は本当に薄いのです。公式見解を述べる役回りはもちろん引き受けていますが、以前の舛添大臣のように、大臣自身の声はほとんど聞こえてきません。逆に今回、これまでは一般の人々にはなじみのあまりなかった「政務官」が多くの新聞紙面に、苗字のみならず「足立信也」とフルネームで、前面に登場しています。そして「政治主導」がスムーズな行政を妨げる元凶でもあるかのような書き方をされてしまいました。新政府が掲げてきた「脱官僚」も、こういう状況ではやはり前途多難だろうと、傍目にも想像ができてしまいます。


とくに今回は、そこへ記者クラブに出入りする大手メディアの“誤報”という事態が絡んできたために、多くの一般読者に対しては、官僚とメディア双方にとって最も都合のよい表現が選んで報じられることになった、というわけですね。官僚と大手メディアはこれまでも持ちつ持たれつの関係で権力を保ってきました。今回もその延長線上にあり、厚労省の内情を考えればなおのこと、起こるべくして起きた報道にすぎないのかもしれません。そして、そういうことは読者の知らないところで多々起きていることだったりするのでしょう。


大手マスコミ各社の報道(例えば「【新型インフル】突然の政務官介入…ワクチン接種回数めぐり二転三転」 2009年10月20日 産経新聞 等)を見ても、議論の内容を抜粋して記載し、また官僚から得た独自のコメントを盛り込んだりはしていますが、あくまで“編集”と言い切ってしまえば、決して間違ったことを報じているとは言い切れません。しかし事情を知らない読者がそのまま読めば、ワクチンの不足を回避すべく科学的根拠に基づいて官僚が下した判断を、政務官が「政治主導」を振りかざして、「恣意的に」「介入」した、と受け取っても仕方ないような、巧妙な表現がとられています。字面だけ見れば「客観報道」の枠からはみ出てはいないため、余計にやっかいですよね。


こうしたごたごたのツケは、結局は現場に、そして要は患者である一般市民に回ってくることになります。しかもこうした報道が後を絶たないと、誰を、何を信じていいかもわからなくなります。情報の非対称性を解消するには、最初から厚労省のホームページなど見ればよいのかもしれませんが、なかなか使いづらいのが本当のところです。一般向けに読みやすくまとまっている情報は本当に限られていますし、細かいことを知ろうとしてもたどり着くのは簡単ではなかったり、実際手に入らなかったりします。たどり着いたとしても、労力を費やして読み込まねばならない長い議論だったりして、一般の人にそれが要求されるのもどうかというところです。やれやれ、ですね。


ワクチンの話のみならず、日本の医療レベルや、医学技術水準は、世界に誇れるものだと思っています。それなのに、行政の内部事情によって、国民がそれを適切に享受することが妨げられているような気がしてなりません。新政府になって2ヶ月(もう2ヶ月ともいえますが、何かを変えていくことはそう簡単なことではないでしょうから、まだ2ヶ月、というふうには思っています)。今後、その医療行政の展開・変革を見ていくにあたり、足立政務官の孤軍奮闘がどう続き、どうなっていくのか、着目してみたいと思います。今回の一件からは、そんな視点を得たのでした。

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コメント

ほんとうにお疲れ様です。
「官に頼らずとも公は創れる」運動の真髄がかけがえのない真価が、日本のマスコミに存在しなかった真のジャーナリズムから生まれたものに他ならないことを感じております。
川口編集長、厚労省によって不当に虐げられている妊婦さんたちのために老いた身で何か少しでもできることがないか捜しております。ワンクリック100円募金にして復活していただければまことに幸甚に存じます。

前々期高齢者さま

1クリック募金の真価は、その具体的テーマはもちろん、おそらくそれ以上に、まさに「官に頼らずとも公は創れる」運動であることにありました。そのことを的確にご理解いただいていることを、大変心強く思います。ただ、その復活に関しては当面なかなか難しいものがあり、力不足で本当に申し訳ないばかりです。ただ、これからも誌面・ウェブを通じ、「官に頼らずとも公は創れる」ことをお伝えし、形にしていきたいと考えています。そうした活動に共感し、応援し、また同時に厳しい目で見守って下さる方々の存在も、常に心に留め、肝に銘じていく所存です。

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