働く女性と妊娠。

投稿者: | 投稿日時: 2010年01月22日 10:53

このところ私のおなかもだいぶ大きくなってきました。実は臨月まであともう少しなのですが、すでに年末から、お腹は傍目には臨月並みの大きさまで成長(?)しています。中に入っている子供の大きさは標準レベル、体重の増え方もそれなりなのですが・・・。母体の体調としては、風邪等のほか、年内からあった妊娠後期に特有の小さなトラブルもちょこちょこ起きていて、騙し騙しやり過ごしてきた感じです(動悸の頻発や、軽い不正出血など)。初産の時にはなかったようなことも多く、「やっぱり歳のせいかも」などとついつい思ってしまいます。


そんなこんなを考えていたら、そういえば年始のころ、気になる新聞記事があったのを思い出しました。

●周産期医療の立て直しには女性の労働環境改善が必要だ
(2010年1月4日 毎日新聞)


要旨としては、

●近年の初産の高齢化(出産適齢期の20代~30代前半の出産は減少、30代後半以降の出産が増加)
→ハイリスク妊婦の増加、例としては、2500グラム未満の低出生体重児の出生総数に対する比率が、90年の6.3%から07年には9.6%に急増。過去最低だった75年の5.1%と比べて倍増に近い。1500グラム未満の極低出生体重児の比率も、90年の0.5%から07年には0.8%に増加。
→その結果、新生児集中治療室(NICU)が慢性的に不足。

●初産高齢化の原因は、女性が「生みたい時に安心して生めない」働き方にある。
=「仕事か出産か」の二者択一を迫られ、仕事に生きがいを感じる女性は妊娠に二の足を踏み(←「妊娠したら要職から外れるのが当然」という社内のムード)、30代半ばになって「駆け込み出産」を選択せざるを得ない現状。

●思い切って妊娠しても、現在の日本の一般的な労働環境は母体の健康にとって過酷。
=出産ぎりぎりまで長時間の残業をする女性は珍しくなく、切迫流産、切迫早産、救急搬送や入院も。その他、「休息する場所がない」「超過勤務がある等労働時間が長いこと」「作業の負荷が重い」「健診時の休暇が得られない」などの問題も。
→結果として、高齢でなくても「長時間のデスクワークなどによる運動不足、疲労蓄積、冷え」が原因となって、お産が順調に進行しないケースが増え、高齢出産とあいまって帝王切開が増加している。

●子どもに障害が残った場合に必要となる障害者医療・福祉も不十分。都内では、長期入院が必要な重症心身障害児(者)用の病床も常に満床で現在の待機者数は600人。在宅での看護を支える訪問支援も不十分。
→その結果、治療が一通り終わっても退院できず、NICU入院が長期化するケースが増加。

●今後は訪問看護、救急時の受け入れ、短期入所など関連機関が連携をとりながら支援をしていく体制作りが必要。周産期医療の問題は、福祉行政や社会のあり方の根源も問うている。

といったところです。
幸せなことに私はとても恵まれた労働環境で働かせていただいていますが、私の同級生や同世代の友人の中には、上記のケースに当てはまるような人が大勢います。タイミングを気にしすぎてなかなか子供をもつことに踏み切れない人や、いざ妊娠しても通勤がつらくて切迫早産を経験した人などなど・・・。

ちなみに、こうした例に加えて、無事に出産できても保育園がいっぱいで預けられず、結局仕事をあきらめた人たちもそれ以上に多くいます。(これに関しては、今回の出産では私も例外とは言えず、頭を悩ませているのですが・・・。)


ですから私は、上記記事が訴えている「女性の労働環境改善」についてはおおいに賛成した上で、それでもまだ足りないのでは、と考えてしまうのです。つまり記事の最後にあるように、「周産期医療の問題は、福祉行政や社会のあり方の根源も問うている」のだと広げて考えるのであれば、女性だけでなく男性の働き方も含めて考えるべきでは?と思うのです。以前からちょこちょこ書いていることでもありますが、「妊婦に優しく」ではなくて、「体調の悪い人や困っている人には優しい」社会であってほしいし、それに加えて働き方ということでいえば、例えば体を壊して一定期間休養をとった人が、そのまま会社をやめざるをえない状況に追い込まれるのでなく、本人の能力を活かせる形で復帰できる体制が整備されたら、と思うのです。そうすれば男性の育児休暇だって、それと比べて大きな抵抗もなく取れるだろうし、もちろん女性ももっとゆとりを持って出産・育児に臨めるようになる気がします。


ただし、それには働く側の意識も変える・変わる必要がありますよね。キャリア志向の人たちにしてみると、長期のブランクがあると復帰しても同じ環境・待遇で働けなくなることが現状の最大のネックなわけですが、以前とまったく同じ環境・待遇を求めるのは実際難しいことでしょうし、ある程度の譲歩は当然かと思います。ただ、私が思うのは、それは会社に対する譲歩というより、「自分に対する譲歩」と考えるべきなのでは、ということ。特に妊娠・出産・子育てについていえば、会社やキャリアが人生のすべてでないと考えたからこそ自分で選択した・することですから、そこは納得できるはずです。


もちろん、現状ではいずれにしても能力がきちんと評価・反映された復帰ができているとはいえないことが問題です。それは出産・子育てを臨む多くの女性や、あるいは長期療養を経験した人にとって不本意であるだけでなく、社会的損失でもあるわけで、結局は国民すべてに影響することですよね。だからこそ、“お上”に対策を求める姿勢でなく、まずは国民がそういう認識・考え・意識を共有することが先なのかな、とも思うのです。

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