新専門医の目的は何?

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2016年12月07日 00:00

「この役に立たない可能性の結構高いような専門医を、多大なコストをかけて、しかも不充分な、今後デメリットの大きい方法で認定するメリットが本当にどこにあるんでしょうか。それを超えるメリットを私に教えてください」


現場からの医療改革推進協議会 第11回シンポジウムから印象に残った話を書くシリーズの2回目。今回は、最後から2番目のセッション『専門医制度』から。


冒頭に紹介したのは、トップバッターだった南相馬市立総合病院麻酔科の森田麻里子医師の結語だ。


医療関係の人には改めて説明するまでもないことだろうが、来年4月から新制度下での専門医養成が始まる予定だったのが、「地域医療崩壊に対する関連団体からの強い懸念の声とともに機構のガバナンス不足に対する厳しいご指摘、また、制度設計や運用に対する柔軟な対応を求める各学会からの強い要望等を受け、新理事会としてその施行開始を1年間延期することを正式に決定致しました。」(日本専門医認定機構のサイトにある吉村博邦・同理事長挨拶から抜粋)ということになっている。


シンポジウムでは、大変に刺激的なプレゼンテーションが数多くあって面白かったのだけれど、ヒト様にお伝えする以上、よく理解しないで、いい加減なことは書けない。どういう経緯だったっけ、と新制度発足のきっかけになった『専門医の在り方に関する検討会』の議事録を読むところから始めてみた。


専門医の質(質とは何ぞやという定義も本当は必要と思うのだけれど)を担保するためには指導医の下で一定以上の症例を経験する必要がある、という、目的に照らしたら文句のつけようのない正論と、研修プログラムの組み方次第では医療過疎地から中堅若手の医師が消えかねないという懸念とが、並列で議論されていたと分かった。


優先順位を決めずに一つの仕組みで同時にクリアしようとしたら、針の穴を通すようなことなるよな、と正直思う。まして、制度設計する段階で、別の目的まで同梱されたら目も当てられない。そういう邪心があったのでないか、と中堅若手の医師たちは強く疑っているようだ。
(つづく)

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