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ニュース〜医療の今がわかる

谷川武・筑波大学大学院助教授インタビュー

――確か、問診による一時スクリーニングもありますよね。

 症状の程度と自覚とに相関性がないので、一般に行われている問診によるスクリーニングは不適当だと思います。実際、名鉄線で衝突事故を起こした運転士は、重度のSASだったにも関わらず、問診では見逃されていました。

 自覚症状に基づくものがあてにならないのは、眠気の感じ方や表現の仕方に個人差があるからです。特に若い人の場合、たとえSASで眠っていないのだとしても、その「眠気」を「疲れ」と勘違いすることが多いのです。ドリンク剤を飲んで、効いたー、と思っている人がいたとしたら、それはカフェインで眠気を一時的にごまかしただけのことですよね。

――本題に入りまして、SASの何が社会問題なのですか?

 日本では、毎年6千人から7千人が交通事故で亡くなっています。SASの職業運転手は、事故リスクがそうでない人の3倍から10倍とも言われ、SASを治療すると、交通事故の少なくとも5%、多く見積もれば17%を減らせるとの説があります。5%減らしたとして、単純計算で年間300人以上の事故死者を減らせる計算です。負傷者、物損を合わせると救える数は、おそらく数十倍に上り、恩恵を受ける人は数万人に上ると推定されます。

 ところが、治療を要する患者は二百万人以上いると推定されているのに、治療中の患者は10万人にも満たないのです。CPAPという標準治療法が確立しているにも関わらずです。年間に少なくとも何万人もの人が救えるにもかかわらず、何もしないとは残念ではないですか。

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