文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

小松秀樹・虎の門病院泌尿器科部長インタビュー

――法曹関係者には受け入れがたい話ですね。

 そんなことはないと思いますよ。現に私が直接お話しした人たちは、皆、賛成だと言ってくれました。刑事処分の必要がある人だけ検察に回してくれればよいのだと言ってくれています。

――話を戻しまして、なぜ低所得者が真っ当な医療を受けられなくなるのか、そのロジックを教えていただけますか。

 患者さんはご存じないかもしれませんが、ほとんどの勤務医は勤労意欲を失いかかっています。いつ辞めようか、いつ辞めようかと思いながら働いています。従来より、過重労働の上に給料が安かったのです。特に大学病院の若手医師などは、本給だけでは生きていけません。それでも基本的に医療が好きなので、何とか踏み止まってきました。これに患者との軋轢が加わりました。実際に、相当数の医師がやる気をなくして、病院を離れています。このため、医師不足が目立ち始めました。

 ただし本来は最先端医療をやりたいと思っているので、そこそこの労働条件でバリバリ働ける医療施設があったら、優秀な医療者は皆そこで働きたいと思います。こういった施設は健康保険の枠内では実質的に不可能ですが、自由診療にすれば充分可能です。民間保険とリンクして、そういった医療機関を作ろうという動きがあるやにも聞いています。急性期病棟に踏み止まってきたリーダー的な医療者たちが、そういった医療機関に移動してしまったら、もはや日本の保険医療は質を保てません。結果的に民間保険に加入できない低所得層は真っ当な医療を受けられなくなるということです。

 そして、いったん医療格差が生じてしまった後は、医療費を上積みしたところで元のような均質な医療に戻らないことは、英国の例が証明しています。居心地の良い医療機関からは、優秀な医療従事者が動きたがらないからです。このような民間保険とリンクする医療機関が出現してからでは、もはや手遅れなのです。

 1  |  2  | 3 |  4 
  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス