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ニュース〜医療の今がわかる

福島県立大野病院事件第一回公判


 9時15分になって、整理券が配られる。26枚の傍聴券に対して、並んだのが349人と発表され、ざわめきが起きる。コンピューターによる抽選は何ともあっけなく終わり、2番の次が26番で、次が56番。佐藤教授があんぐり口を空けて、その後、何人かと声を交わしているが全員外れたようだ。こちらも全滅。佐藤教授は大学へ帰るという。

 1人くらいは入れるだろうと思っていたので呆然として「これからどうしようか」と考えながら庁舎正面まで戻ってくると、いつの間にか中継車が5台に増えている。TVカメラも入り乱れて15台はあるだろうか。報道陣50人近くが二手に陣取っている。この裁判、いつの間に、こんな注目されるようになったのか、と驚きを禁じえない。少なくとも私が地方記者をしていた時には、裁判所でこんな数の報道陣に会ったことがない。と、驚いているところへ、庁舎玄関まで乗りつけるワゴン車。検察だった。大きな風呂敷包みを降ろして建物へ入っていく。この後で出てくるが、被告が徒歩で入ってきたのとはエライ違いだ。


 後は被告の入廷を待つばかりだが、良いポジションは報道陣に押さえられているし、恐らくその角度の写真や映像はいくらでも流れるので、当方としては別アングルにしたい、と、先ほど探索中に目を付けていた裁判所向かいの市役所庁舎へ。廊下から、かなりよく見える。

 と思ったら、市の職員から声をかけられる。「今日は何ですか?」「大野病院の事件です」「知事さんですか?」「いえ、産婦人科のお医者さんです」「あぁ、そんなのあったですねえ。凄い人数だから、てっきり知事さんかと思っちゃった」。当方は当方で、そういえば知事が逮捕されていたんだっけと思い出す。

 地元の一般の人の、この裁判に対する認識は、この程度かもしれないと思った。9時50分になって、何やら徒歩で裁判所へ入っていく集団がいる。ひょっとしてと思って撮影しておいたら、しばらくして報道陣が散り始める。どうやら被告が徒歩で出廷したらしい。(後から確認したところ、この写真の後姿右側が加藤医師)それにしても、被告人が来たというのに、報道陣が随分行儀が良いもんだなあと感心していたら、あとで佐藤教授から種明かしがあった。

 ここまで来ると他にすることもなく、とりあえず福島県立医大の産婦人科医局へ挨拶に行くことに。福島駅からバスで40分近く、440円。かなり遠い。しかし、その代わり、だだっ広い。

 医局で佐藤教授と少しお話して分かったことが一つ。実は報道陣は加藤医師の顔をちゃんと知らない。裁判所の前で加藤医師に対して妙に行儀が良かったのも、そのせいらしい。

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