福島県立大野病院事件第五回公判
この日も検察側証人尋問。証人は死亡した妊婦さんの子宮を病理鑑定した福島県立医大のS助手。
たった1人の尋問だったのだが、17時50分まで延々と長引いたらしい。
らしいというのは、糖尿病学会のロハス・メディカルWSの準備があって、傍聴を午前の部(12時45分まで)で切り上げたため。結局、検察側の主尋問だけで終わってしまった。なので、今回はいつもに増して周産期医療の崩壊をくい止める会頼みの面がある。
自分で全部を体感していないこともあるのだが、今回の傍聴記は本当に悩んでしまった。尋問に込めた検察の狙いを掴みかねたからだ。
下記のやりとりだけ見れば「いい加減な鑑定をしやがって!!」と無罪判決が出た場合に備えて「戦犯」追及しているようにも思える。
検事 鑑定書の後でさらに病理診断したことがありましたか。
S助手 あります。
検事 それは自発的に行ったものですか。
S助手 依頼されて行いました。
検事 誰から依頼されましたか。
S助手 警察と検事さんから
検事 どのような趣旨でしたか
S助手 癒着の部位、範囲について
検事 どのように依頼されたか覚えていますか
S助手 せん入胎盤かかん入胎盤か、よく明らかにしてくださいとのことでした。
検事 再度検査をする契機になったのは何ですか。
S助手 弁護人側の鑑定書が公開されて、鑑定に食い違う部分があるから、その食い違いをもう一度見直してもらえないかということでした。
検事 依頼を受けた時期は覚えていますか。
S助手 昨年だったか。。。
検事 記憶喚起のために言いますが、契機になったのは弁護側の鑑定書が出てきてからでしたね。
S助手 今年の1月でした。
検事 平成19年の1月に間違いありませんね。
S助手 はい。
検事 今度は組織学的に鑑定書を作成したわけでしょうか。
S助手 以前の鑑定書で癒着でないと判断していた部位に癒着が新たに見つかったので、それを鑑定書にしました。
検事 どうして判断が変わったのですか。
S助手 理由はいくつか挙げられます。一つは残存する絨毛が少なく剥離による挫滅で判断できない部分があったことで、紛らわしいものについて前回は癒着はないものと判断していましたが改めて見てみると癒着と判断し直したところがありました。それから、癒着胎盤の診断基準は絨毛と子宮筋層との間に脱落膜が介在しないことなのですが、栄養膜細胞が脱落膜細胞と同じ構造で区別できないので、難しいところは脱落膜細胞ということにしておこうと判断していましたが、私自身も過去の標本を見て勉強し直して改めて見直すと、脱落膜ではなく栄養膜と判断できるものがあり、そういう理由でいくつか前回は癒着でないと判断したものの判断が変わりました。