医療事故調検討会2
「全体を総括すると概ね目的を達しているということでしょうか」と事務局に尋ねる。
言葉に詰まった事務局に代わり山口委員が「私がモデル事業の中央事務局長なので答える」とマイクを握る。
「スタートしてからここにいたるまで、特に最初の1年間はマンパワーが足りず、またどういう風に進めてどういうアウトカムを出すのか試行錯誤で、ようやく基本的な方向は固まったかなと考えている。ようやく固まったので、広く周知して広げたいということで今回につながっていると思う。モデル事業の方法論全てが正しいということではなくて、たとえばモデル事業では解剖が必須になっているけれど、原因はほとんど臨床経過で分かる。解剖はそれを確定させるに過ぎない。むしろ半分くらいは臨床経過の方に問題があるけれど、解剖ではそれが分からないというような事例だった。その意味で臨床評価が重要になってくると思うが、評価を一定の基準でやることが必要。現在は、事例ごと各学会に依頼して領域ごとに評価してもらっているので、評価基準がキッチリ定まっているとは言えない」
ちなみに今回の検討委員とモデル事業の運営委員とでは山口委員のほかに4人の重複がある。加藤・児玉・高本・樋口の各氏であり、樋口委員が「論点を補足する。モデル事業は死亡事例限定で地域限定で必ず解剖を行うことになっていた。このため解剖に遺族の同意が得られず、対象にならなかったものもある。ただし、何のevidenceもなしに事業を拡大するわけにはいかないから、今後のための基礎データを集めたと思ってもらいたい。その上で見えてきた論点が三つあって、一つ目がモデル事業は現行法が前提になっているので入り口段階で警察とどちらで扱うのか迷うということがあった。今後制度改正をする場合、参考になるかもしれない」と話をつないだ。
回りくどい言い方だが、法改正が必要になるかもしれないということと理解した。続いて
「二つ目はマンパワーの話があったが、人員にとっても大変なので、費用がかかる。それがどの程度かかるものなのか、何らかのベースにはなると思う。最後に、そのコストに対してどういうベネフィットがあるのかも論点になる。当事者の満足度に加えて社会的影響も測らなければならない。そのためには、まだ事例数が少なすぎるかもしれないが」
その後で、前回各委員が要求したデータで事務局が調べたものの説明があり、鮎澤委員が「モデル事業だけでなく、現場レベルで行われている事例が既にこれだけある。この経験を是非生かしてほしい」と述べる。まったく、その通りだと思う。
最後には、加藤委員と木下勝之・日本医師会常任理事が、それぞれの提出資料について簡単に説明し、第二回の委員会は終わった。
結論として思うのは、コンテンツを盛り込みすぎということである。厚労省は、これだけ大事な話を、普段と同じようなセレモニー的仕切りで進めて構わないと思っているのだろうか。小松先生ではないが、将来の人間から自分たちのしたことがどう思われるのか少し考えた方が良いと思うし、こんなスピードで出口まで連れて行かれるのは真っ平ゴメンだ。
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