院内患者会世話人連絡協議会・峯直法副会長インタビュー
――なぜ病院ごとに患者会が必要なのですか?
医療者にも参加してもらって、一緒におしゃべりすることを想定しているからです。そうすればスタッフも患者も一体になれますよね。そもそも、血液がんの治療にはリスクがありますから、患者と医療者が「戦友」となって、患者が前向きに治療に取り組むことが大切だと思うのです。その病院で治療を受けた先輩を知ることで、患者の知識もQOLも上がり、前向きになれます。
――現役患者のメリットは分かるのですが、先輩患者にどういうメリットがあるのですか。集まってくれますか?
物理的というか情報を得るメリットはないかもしれません。でも私もそうですが、人間誰かの役に立ちたいという気持ちは元々あると思いますし、その気持ちが闘病を経て強くなります。発病から社会復帰までの間に様々な方のお世話になり、支えられて現在の自分があるんですね。そのお世話になったことを還元したい。みんなにハッピーになってもらいたい。経験談を話すことによって元気をつけることに寄与したい、そういう気持ちになるんです。そして、そういう前向きな気持ちで日々生きていくことが、二度と病に負けない原動力になる気がします。
――なるほど。では医療者は参加してくれますか。
実は院内患者会ができた病院で、一番喜んでいるのが看護師さんかもしれません。病棟ナースだと、入院中は24時間、戦友のように患者とお付き合いがあるのに、退院してしまうと途端に接点がなくなるんですね。外来の時に病棟まで上がってきてくれる人ばかりではないから、自分たちの看護が正しかったのか分からない。元気になった患者さんと会えば、自分たちのしてきたことは誤りでなかったと医療スタッフもまた元気をもらえるのです。実際にも、医療者にも参加していただいている患者会が多いですよ。
――医療者にもメリットがあるわけですね。
そうです。院内患者会の先駆け的な存在は、富山県立中央病院の「すずらん会」と金沢大病院の「萌えの会」で、どちらも北陸地方にあるのですけれど、医療者側が主導して作ったと聞いています。手抜きというと言葉は悪いけれど、患者会があれば医師や看護師などの医療スタッフサイドも助かるはずなんです。
――と言いますと。
患者はですね、本当は主治医に何もかも話をしたいんです。だけど遠慮しちゃう。というのは医師が忙しいのはよく分かるし、それ以上に患者は今自分が置かれている状態より負担が大きくなることは絶対に避けたいものなのです。分かりにくいですか? つまり、主治医に話をすることによって負担が大きくなりたくないので、この話をしたら負担が大きくなるかもしれないと思うようなことは、主治医には中々話せないものなのです。主治医に話をしたらそれで結論が下されてしまいますからね。
理想は、医師が患者のそういう心境まで汲み取るように親身にコミュニケーションしてくれて、適切な処置をしてくれることだとは思うのですけれど、制度上の問題もあるし限界がありますよね。医師と患者との間に溝ができてしまうのは仕方ないと思います。現在の日本の医療保険制度では、その溝の部分、コミュニケーション不足の部分は、「戦友」が手当てするしかないと思います。田中先生のように、患者と本音でしゃべる医師ばかりなら、こういう必要はないのかもしれませんけれど、田中先生のような人は本当に珍しいですよ。むしろ会話しない、データしか見ないという医師の方が多いんじゃないですか。