臨床研修検討会2
「出身地に帰りたいというのは自然なこと。これまでは大学の外に出てしまって医師としてやっていくのが難しかったから医局に入っただけで、その縛りがなくなった今、2年を1年にしたからといって大学に人が集まるのかは疑問だ。価値観や人生観が昔とは違う。大学がキーとなるのは確かだと思うが、もう一回新しい養成制度を作り直す必要があるのだろう。研修病院の違いによる経済的インセンティブはやめさせるべきというのは前回も主張した通りで、数をあらかじめ各地で枠として決めて、そのうえで全国でマッチングをしたらよいのでないか」
高久
「前回の主張は、各都道府県でマッチングをするということではなかったか」
齋藤
「そうではない。枠は都道府県ごとに決めて、全国でマッチングする」
武藤
「要はカリキュラムを前倒しにして5年生6年生の時にどれだけやらせるのか、具体的案を出したらいいのでないか。スチューデントドクターにどこまでやらせるのか法律を変えられないんだったら、処置の範囲だけ決めてやったら済む。2年やって後半をフリーにするくらいなら、前倒しにする方がいいんじゃないか。ただお願いしたいのは、現場の生の声をもっと集めてほしい。特に教える側の声が出てこない中で我々があれこれ決めてしまって、始まってから違うぞと言われても遅い。
大学の労働環境が悪いのはその通りで、クラークもいないし。雑用じゃないぞという話だったが、少なくとも事務的な雑用はある。医師本来の仕事に専念させることは必要なんじゃないか。米国だったら、クラークも10倍いるし、医師も10倍いる。そんな現状で現場にいる医師がとても疲弊していることは事実だ」
福井
「マッチングに関しては齋藤委員と同じ意見。参加者が8000人ちょっとしかいないのに定員が1万1千もあるのはおかしい。せめて定員を9000位まで絞って、さらに病院の質と分布もうまく考えて地域バランスも整えるべきだというのは私自身が当初から言っていたこと。そのことは前提として、今臨床研修を変えるという話になるのならば、そもそもなぜ臨床研修を導入したかというところも再確認したい。卒業直後からのストレート研修で育った場合、専門外の患者について診られない診たくないという医師が目立ってきて、それではいけないからということで幅広い研修をしようということになった。その状況は変わっていない。研修自体は1年でよいのかもしれないが、しかし大学教育の実習実態が大学によって差がありクリニカルクラークシップを多くの大学で行っていない、だからこそ2年は必要だという論法だった。医師不足の要因にはたしかになったのかもしれないが、しかしそれは数多くある要因のうちの一つで、まずは医師の質を保証することの方が大切でないか。であれば、卒前教育をどれだけ改善できるかの裏付けがないうちに研修だけ見直すのでは、医師の質の基盤が弱い。どういう医師を養成しなければいけないかと何十年もかけて議論してやっと導入された臨床研修だ。いい医師をつくるために、卒前の部分も十分に検討してほしい」
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