臨床研修検討会2
「今の臨床研修に関して言えば、いろいろと案があった中で2年で収まった。だいたい妥当なところであろうというのが個人的な見解。養成を所管する省と研修を所管する省とが一緒に入っているのだから、前倒しでダブっているところをどうするのか議論することはできる。ただ、免許を取ってない段階での医療行為は、最近どんどんされない方向になっている。それには社会的要請もある。また、前倒しをして医学部教育6年、実習1年にするとして、医学部教育の内容はどうなっていくのか。というのが、あまりに人間性に欠けた医師が多いという批判がブームになって、教養教育を強化した結果、専門教育が圧迫されている。それから医学が細分化されて最先端まで教えるとなると全然時間が足りない。最先端のことは卒後にするとなれば間に合うのだが、しかし最先端のことを教えるべきだという意見もあって一致しない。大学の任務として先端の研究がある以上、学生にも触れさせたいし、触れさせることでモチベーションが上がるということもある。要は、日本の医療水準をどこに置くのかの問題でもある。いずれにしても期間を短くするとか教える内容を制限するとか具体的に出してみて、叩いた方がよいのではないか」
小川(彰)
「臨床研修が2年になった経緯は皆さんのおっしゃる通りと理解しているが、しかしもっと歴史的なことを整理すると、平成3年にそれまで2年と4年に分かれていた医学部が6年一貫に大綱改正された。もっと実質的な医師を養成するんだという理念の変革だった。一方で厚労省の側は、文部省が送り出してくる医師の技量が十分でないということで平成13年に臨床研修を法制化して平成16年に実施したと、こういうことだ。
なぜ大学病院が嫌われるかということに関して言うと、国民皆保険は素晴らしい制度だけれど、それができた当時はメスと注射器とお薬だけあれば医療ができた。高額医療機器はなかった。CTとかMRIとかスペクトルエコーとかPETとか。それらの高額なものを国民皆保険の中にムリ無理閉じ込めた結果、人件費に回せる分が少なくなって、人が少なく給与も安いということになってしまった。大学の中では、研修医と上の医師との間に給料の逆転もある。そもそも大学病院の先生というのは医師とは認められず教員としての給与体系になっている。文学部の助手と同じ給料で責任重く夜中まで働いている。入るのが難しい学部で6年勉強させられてこれしかもらえないのか、ということになる。全体の構造的な問題であることをぜひご理解いただきたい」
高久
「武藤委員、福井委員から、学生の実習を変えなきゃという意見が出された。これに関しては確かに文部科学省の検討会、辻本委員も参加されていたと思うが、でも、能勢委員指摘のようにどんどん後退しているという話になっていた。それは患者さんが、学生に診られるのがイヤと言うし、指導教官の方も事故があったら困るということでやらせたがらないということだった。
ところがこれ欧米、カナダなんかだと、患者さんが喜んで学生に診てもらっている。イギリス、カナダなんかは国家試験がないので、医学部を卒業したら即医師ということもあるだろう。日本の国家試験がかなり難しくなっていて集中してらないと通らないというのもある。もし最後までクリニカルクラークシップをさせたら、国家試験の成績は悲惨なことになるのでないか。それからプライマリケアがイコール医師の基本的な診療能力ではないと思う。現場に行って勉強しないと、やはり本当のところは身に付かない。だからどうしても中心は卒後にならざるを得ない面があるだろう。ただグルグル各科を回っても本当の意味のプライマリケアの勉強にはならないので、そこは大臣にもご理解いただきたい」
西澤
「卒前教育だけでは臨床に足りないし、国民にニーズのあるプライマリケアをやる医師が育たない、それには2年必要だという話だった。2年を動かす前提として卒前をどうするのか。今のままなら臨床研修は2年必要だと思う。それから、そもそも論として大学医局が医師の派遣機能を持っているのは良くないだろう、地域でそういうことをするのが大事であろう。大学にその役割を負わせてきたのは、実は行政の怠慢だと思う。行政の責任でそういう仕組みができれば大学は楽になる」
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