製薬業界再編の号砲 ~中医協薬価専門部会
長野
「平成17年だったかに通知が出て、最終的な配合剤の承認申請をしたのでなかったか」
山本
「せっかくこれまでより何歩も進んだ提案なのだから、先発品を守ってしまうような行動はしないようご検討いただきたい」
長野?
「そのようなつもりだ。ただ、配合剤に関しては、患者さんにも利便のある話だし、新薬と同じようなものとして考えている」
山本
「であれば、今作られている配合剤を全部示してほしい。市場性とニーズがあるから出ているということであるなら、かなり広範に使われているんであろう」
遠藤
「若干話がかみ合ってない」
藤原
「たとえばARBと利尿剤の組み合わせがあると医療側は安易に使ってしまう。しかし今までは慎重に1剤1剤見極めていたわけだし、ARBは高い薬で160円から170円する。一方で利尿剤は2円かそこら。その組み合わせで新薬だとやられると企業の戦略を感じざるを得ない。患者の利便性と言われても納得できない」
中川
「薬価維持特例は利益を上げるためではないというが、しかし企業によって配当の割合も内部留保も労働分配率も様々だ。そんな中で業界を挙げてという主張をするのが理解できない。直観的には、将来的に巨大メーカー数社に収れんするのかなという気もするが、その辺の情報公開を徹底して説得力を持った説明が要る」
長野
「今後もきちんと説明できるものを用意したい」
中川
「そういうことを聴いているのでなくて、業界を挙げてといっても、上位メーカーが独り勝ちするんでないかということなんだが」
長野
「まさに製薬業界の実際と将来に関する話で、各社の状況は様々、所属している会社以外のことは分からない。所属している会社から私が理解していることを申し上げると、二つの会社が合併して非常に内部留保の大きな会社と言われたこともあったが、その後様々な技術を買い研究開発の充実に努めている。一方で世界的に生き残るには新薬に加えてジェネリックも必要だし、また日本や欧米の市場だけでなく旧東欧やインド、中南米、そういった広範な企業活動が必要であるとの考え方から1社を多額のお金をかけて買収したが、新聞報道などもされている通りその後様々な事実が出てきて、経営陣は重大な局面を迎えている。いずれにしても世界に打って出て欧米に負けない力をつけようとしている。そしてあらゆる局面で貢献していく、それが日本に拠点を置く私どもの姿勢だ」
小島
「この案を進めると、たぶん業界再編につながるだろうと思っている。それはそれとして議論が整理されて、だいぶイメージが分かってきた(中略)。しかし、業界が数社に絞られてしまったら、業界を挙げてといっても、結局1社1社でやるのと変わらないのでないか」
長野
「当面は数社に絞られるとは思っていない。ベンチャーでも適切な支援さえあれば開発して販売していくことは可能であり、その支援機能を業界として作り上げたいと検討している」
渡辺
「業界の覚悟を示されたもので将来に明るさを感じた。そこには賛意を表したい。しかしながら、財政的影響の減額のシミュレーションがもっぱらジェネリックの普及に重点を置いたものになっていて、○の3つ目が抽象的な文章だ。米国でも日本と同じような状況から普及率3割になるまで5年かかっている。07年の2月か3月からジェネリックの伸びが市場の伸びを上回っているのは確かだが、しかしなお一層関係者の努力が必要だ。やはり、それと同時に薬価改定には市場実勢価格も勘案するというのが基本だろう」
山本
「研究開発がグローバル時代の基本であることは理解している。しかし産業ビジョンでも、企業の正確によって役割分担している。業界挙げてという時にも、それぞれの役割分担を具体的に示していただけると、より理解できるのでないか。9月までに何度かこの部会での議論もあるだろう。この提案がなくなってしまわないように願う」
遠藤
「私からも一言。まさか部会長になると思っていなかったので、いつか言おうと思っていたことなので、部会長としてではなく、一委員の発言としてお聴きいただきたい。我が国の今後の産業界にとって医療健康産業が中核になるべきという意見に関しては全く同意する。ただそのために薬価や診療報酬を施策として用いるというのは間違っている。これらの制度はあくまでも国民のヘルスケアのためにあるのであって、海外勢も国内勢もなく同様の扱いになるのだから。それから特許切れまでの間、工業製品が15年間も価格が維持されるというのは異常だと直観的に思う。それだけの異常事態が許されるには、国民にそれなりの便益がなければならない。端的にはドラッグラグの解消にどれだけ役立つのか。革新的というだけでなく、世界の中で日本で最初に上市あるいは同時に上市されたら認めるというように、より直接的なインセンティブにした方がよいのでないか。今のやり方はマーケットの魅力を高めたら、きっと開発も進むでしょうというものだが、やや不確かに感じる。ただ、これはあくまでも一委員としての意見であって、部会長として、この方向に誘導しようというつもりは毛頭ない」
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