医師の勤務状況、1年前と「変わらない」49.8%
勤務状況が1年前と比べて「変わらない」と回答した医師は49.8%で、「悪化」「どちらかというと悪化」が計34.8%だったことが、厚生労働省のまとめで分かった。「改善」「どちらかというと改善」は計14.3%にとどまった。(新井裕充)
厚労省は4月15日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)の部会に、病院勤務医の実態調査の結果(速報)を示した。
調査によると、直近1週間の勤務時間の平均は61.3時間で、最大が128時間。診療科別では、「救急科」が74.4時間と最も多く、次いで「外科」65.0時間、「産科・産婦人科」と「脳神経外科」が63.9時間、「小児科」63.7時間―などの順だった。
1か月当たりの当直回数の平均は診療科全体で2.78回。診療科別で最も多かったのは「救急科」5.48回で、これに「診療科不明」4.89回、「産科・産婦人科」4.51回、「小児科」3.48回、「脳神経外科」3.03回などが続いた。
常勤医師の当直回数は、1年前と比べて「変動なし」が71.0%、「減少」15.0%、「増加」14.0%。基本給や賞与など経済面での処遇は、「変わらない」が83.0%を占め、「増額」は6.8%、「減額」は5.5%だった。
■負担が最も重い業務は「当直」30.6%
調査では、医師の労働環境が1年前と比べて改善していない実態が改めて浮き彫りになった。
勤務状況について、1年前と比べて「変わらない」と回答した医師が49.8%で、「どちらかというと悪化」20.4%、「悪化」14.4%。「どちらかというと改善」10.2%、「改善」4.1%だった。
また、入院・外来別に業務負担の変化を見ると、入院に関する業務負担は「変わらない」61.2%、「増加」は26.5%。外来では、「変わらない」が53.7%、「悪化」は38.8%だった。
日常業務で負担が「最も重い」と感じる業務は、「当直」30.6%が最も多く、次いで「外来診療」20.9%、「入院診療」17.8%など。「重い」と感じる業務で最も多かったのは、「診断書、診療録・処方せんの記載」50.8%で、これに「主治医意見書の記載」44.2%、「検査の手順や入院の説明など」29.0%、「診察や検査などの予約オーダリングシステムの入力や電子カルテの記載」27.6%などが続いた。
回答した医師の平均年齢は40.1歳で、経験年数の平均は14.4年。所属する病院での勤続年数の平均は5.5年で、常勤が99.8%を占めている。所属する病院の9割以上がDPC(入院費の包括払い)を導入しており、比較的大規模な病院の勤務医を対象にした調査となっている。
一方、業務負担が増加した理由を各診療科の責任者(医師責任者)に自由記述形式で求めたところ、入院診療では、▽患者数の増加▽医師数(非常勤・研修医含む)の減少、能力不足▽手術・分娩回数の増加▽事務作業の増加▽重症患者の増加▽時間外診療、救急診療の増加▽電子化による煩雑化▽高齢患者の増加▽スタッフ不足―などの回答だった。
外来診療でも同様に、▽患者数の増加▽医師数(非常勤・研修医含む)の減少、能力不足▽事務作業の増加▽重症患者の増加▽時間外診療、救急診療の増加▽電子化による煩雑化▽スタッフ不足―などが挙げられた。
外来診療に特有の理由としては、▽患者への説明に要する時間の増加▽診療内容の広範化・煩雑化▽外来担当回数(日数・時間)の増加▽近隣の病院・診療所の閉鎖・縮小等▽検査件数の増加▽時間外診療、救急診療の増加▽患者からの要求の増加・煩雑化―などの回答があった。
回答した医師責任者の平均年齢は51.6歳で、医師としての経験年数は平均26.1年。最も多い役職は部長55.5%で、常勤が99.8%を占めている。担当する診療科は、内科21.3%、外科12.8%、整形外科10.3%など。
今回の調査は、昨年12月から今年2月にかけて全国1151病院の勤務医を対象に実施。無効な回答や勤続年数1年未満の回答を除いた2389件(医師責任者)、4227件(医師)を集計した。
2008年度の診療報酬改定で緊急課題とされた病院勤務医の負担軽減策の効果を調べるため、07年10月から改定後の08年10月までの1年間で、病院勤務医の負担がどのように変化したかを5段階評価と自由記述形式できいた。調査項目は、1か月当たりの当直回数や1週間の勤務時間、業務負担の変化など多岐にわたっている。
調査結果について、詳しくは厚生労働省のホームページで。