3次救急の受け入れ不能なくしたい-都内3救急病院、41慢性期病院が連携へ
■連携プロジェクトの輪を広げる
この急性期病院と慢性期病院の連携をさらに広げようと、参加者らが別の医療機関に呼びかけたところ、急性期病院からは武蔵野日赤病院と杏林大学付属病院が、慢性期病院からは41施設が参加を表明。この5月に連携体制を仕切り直してスタートを切った。事務局は、都内約70の療養型病院が参加する「東京都療養型病院研究会」(安藤高朗会長)が担っている。
今回の会合は、連携プロジェクトに参加する各医療機関の初顔合わせともなったキックオフ。院長や連携室職員など70人が顔を揃えた。
東京都福祉保健局の吉井栄一郎医療政策部長が来賓挨拶し、「救急医療機関と慢性期医療機関の連携を含めた具体的なネットワークを、患者のために汗をかきながらやっている。行政としてのミッションを見い出せるなら、ソフトな仕組み作りに参画できれば」と行政側からも支援していく姿勢を示した。
■「慢性期病院に受け入れのインセンティブを」
飯田院長は府中病院との試行プロジェクトを紹介し、実際に病院見学を省いた上で、医療区分2,3などの診療報酬上で高めに評価される医療依存度が高い状態の患者の転院を引き受けた例を紹介した。「(病院見学の省略を)『そんなことできるのか?』と、皆様は思われるかもしれないが、今の社会情勢の中で慢性期病院が『ほしい』と思う患者さんが、急性期の中にはいる。その辺りを急性期病院にも分かっていただきながら、入院期間を短縮するということをご理解いただければと思う」と呼び掛けた。
また、今後の連携の課題として▽慢性期病院の機能などの情報収集▽転院連携のコーディネーターをどこで担うか▽転院前の患者情報伝達▽転院前の病院見学を省くためのリスク▽慢性期病院での病床確保▽慢性期病院での医療の質の確保―を挙げた。その上で、連携の仲介役について「慢性期病院の機能を十分把握し、患者情報を的確に紹介病院へ伝達してほしい」と求めた。今回の連携プロジェクトのコーディネーターは、急性期医療機関の医療ソーシャルワーカーに担ってほしいとした。
さらに、慢性期病院が積極的に患者を受け入れるため、「転院に対して診療報酬でインセンティブを付けてほしい」と訴えた。
■「MSWはコーディネーターとは別」
この連携の窓口を担った府中病院医療相談係の濱中知恵子係長が活動を報告した。慢性期病院に患者を紹介しても、受け入れが「1か月や3か月先」と言われることもある中、このプロジェクトでは慢性期病院の協力を得て、スムーズに患者の転院が決まったことを紹介した。連携の苦労話として、「患者さんの経済事情の面接をして、ご家族の希望に沿ってご案内するのがほとんど。距離的な問題、医療費や食事代以外にも、リースやおむつなどの自費負担がかかるということで、ご家族の希望に合わずお願いできなかったケースもあった」と明かした。
また、連携コーディネーターと医療ソーシャルワーカーの役割の違いについて、「慢性期の受け入れ態勢や提供できる医療、患者さんの経済事情などを加味すると、わたしどものほうで『右から左へ』、コーディネーター的に『空きがあるからそこにお願いしましょうか』というようにはいかない難しさがある」と述べた。
このほか、3つの急性期病院側から慢性期病院側にあいさつした。その発言内容を紹介する。