脳卒中パス参加医療機関の合同会議が初会合―東京都
種類の違う複数の脳卒中地域連携クリティカルパスを統一していくため、都内で連携パスに参加する医療機関が一堂に会するという「脳卒中地域連携パス合同会議」の初会合が5月30日に都庁で開かれ、約300人の医療機関職員や院長が参加した。種類の違う連携パスを集めて情報交換するという取り組みは国内でもめずらしく、厚生労働省の担当者は「他の自治体からは、そういうことをしているという報告は聞いたことがない」と話している。(熊田梨恵)
この取り組みは都道府県が医療計画の中で定めている脳卒中の地域医療連携に関するもの。脳卒中患者の急性期病院から在宅医療までの治療計画やスケジュール、身体状態などを記載した「地域連携クリティカルパス」を使った医療連携については、岡山県倉敷市など多くの地域が既に取り組んできている。ただ、現状では2008年度診療報酬改定で脳卒中医療に関する評価が多く盛り込まれ、特にパスを使った医療連携体制が評価されるようになったため、都道府県全体として整備を進めていく必要に迫られている。
都は昨年度から、「脳卒中医療連携協議会」を開催して今年3月から脳卒中患者の救急搬送体制をスタートさせた。また、医療連携について協議するための「脳卒中地域連携パス部会」を開催。都内で使用されている10のパスについて、項目や様式を統一していく方向で合意していた。ただ、短期間で10のパスを統一に向かわせると、現在の各地域での連携体制を混乱させるおそれがあるとして、まずは各パスについて情報共有することが必要との認識で一致。その上で、▽パス参加者の相互の情報共有▽パスに未参加の医療機関への情報提供▽パス同士の連携や、各パスに共通する課題の把握と解決▽複数パスに参加する医療機関の会合参加回数の合理化―などを目的に、合同会議を開催することを決定した。
こうした複数の脳卒中パスを集めて情報交換するような取り組みについて、厚生労働省医政局指導課の担当者は他の例を把握していないとしており、国内でもめずらしい取り組みとみられる。
同日の会合で、都福祉保健局の大久保さつき参事は「脳卒中医療を担うこれだけ多くの方々が情報共有するために一堂に会するのは初めてのことで、全国でも初の試みと思う」と挨拶し、都としても連携体制の構築を支援していきたいとした。
会合冒頭にあいさつした都医師会の弓倉整理事は、都内の10のパスは各地域の独自の取り組みによる結果と評価した上で、さまざまな問題も起こっていると指摘。「多くのパスが地域の特性に合わせて地域完結型のパスを目指しているようだが、実際の患者さんの流れを見ていると、他の2次医療機関や他県に患者さんが行ってしまって、円滑な運用につながっていないところもある」と述べた。このほか、パスの項目が患者の状態に当てはまらなかったり、複数のパスに参加する慢性期病院の事務負担が煩雑になったりすることなどがあるとした。
会合では、10のパスに参加する医療機関がそれぞれのパスについて、経緯や記載内容についてそれぞれ解説した。
都内にあるパスは次の通り。
▽東京東部脳卒中連携協議会(事務局=聖路加国際病院総合医療相談室、埼玉みさと総合リハビリテーション病院医療連携室)
▽Metropolitan Stroke Network研究会
▽東京都区西北部脳卒中医療連携検討会(事務局=日大医学部附属板橋病院)
▽足立区脳卒中情報ネットワーク
▽ 区東部脳卒中医療連携パス
▽西多摩地域脳卒中医療連携検討会
▽北多摩脳卒中連携パス協議会
▽北多摩南部脳卒中ネットワーク研究会
▽北多摩北部脳卒中連携パス研究会(事務局=多摩北部医療センター地域医療連携室)
*南多摩保健医療圏脳卒中医療連携協議会のパスは試行中
都内には12の医療圏があり、人口は約1300万人。2006年に脳卒中で死亡した都民は約1万1000人で、死亡数全体の 11.5%を占めていた。2005年の「脳血管疾患」患者は約10万8000人。脳卒中患者を救急で受け入れる都の「脳卒中急性期医療機関」に158の医療機関が認定されている。
脳卒中パスに関しては、北多摩南部医療圏(武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、小金井市、狛江市)が2001年に脳卒中ネットワーク研究会を立ち上げ、当時ほとんど圏内に存在しなかった回復期病床を設置するよう取り組み、地域の脳卒中患者や医療資源の状況を把握するなど、活発な活動を続けてきた。都内でもこの医療圏のパスを参考にしているところが多い。