医療基本法制定に4党議員前向き
埴岡
「体系的なものをつくるべきという点については共通のものが聞けた。私たちの提唱する4つの柱が、およそ全てを包含できると思う。いかがか」
加藤
「必要な人に必要な医療が届いていくのは根本だろう。市場原理ではない医療体制の確保と配分のあり方を確立する必要がある。単にEBMというよりも、どうやって納得できる所にたどり着けるかであろう。その辺りのところが今わりと欠けている。両親がそういう立場になってみてイザとなると縦割りだった。患者参加については、がん対策基本法が一つのモデルになるだろう。あの法律で協議会に患者代表が入ったことに関しては役所の人も評価している。協議会というのはコンセンサスをつくることに意味があり、力の強い人に入ってもらって、その人が代表する団体や業界の納得を得ていく仕組みだったと思うのだが、患者を代表する人はこれまで入っていなかった。やってみたら確実に成果が出ていて、それは都道府県レベルでも同様に評価されていると聞いている。そうやって評価が定まれば自ずから今回もそういう話になるだろう」
加藤代議士が答えている途中に鈴木参院議員が到着。
埴岡
「ちょっと順番に割り込ませていただくが、鈴木さんは前回基本法の必要性を認めつつ政争の具にしないことが大切だと言った。その認識は変わったか」
鈴木
「その認識はより深まっている。今回のインフル騒動で、ますます思いを強くした。感染症にしても、未曾有の高齢社会にしても、今まで誰も経験したことのない医療課題に対応しなければならない。誰一人として正解を持っている人のいない時代だ。対応するには、関係する全ての人々、行政であり患者であり政策担当者であり専門家でありメディアでありと、そういう人々が状況と情報をシェアしコラボレーションしなければならない。現場の情報を我々は知らないし、全体の状況を現場は知らない。国民一人ひとりに適切な行動を取ってもらう必要があり、そのためには情報を共有し協働していくしかない。基本法は、その方向性に合致する」
埴岡
「では、話を4本柱に戻して、高木さん」
高木
「現段階では前回参加した浜四津さんと私だけの話だが、しかしきちんと党の見解とするようにしたい。4つの柱については認識を共有している。個別に見て行くと、基本法なので憲法13条と25条の理念は入れないと意味がない。最高裁の判断では、国の責務として宣言しただけであって、具体的な権利まで約束したわけではないということのようだが、世界に誇る国民皆保険制を将来にも維持する拠り所となるだろう。公共財としてということを明確にすると医師にも責務が発生する。現在は標榜も自由、どこで開業しても自由だが、法律の中で医師が一定の責任を負うと位置づけることも可能でないか。必要数を地域や学会で見極め、必要な専門医数を育成するあるいは制限するということになる。それから都道府県に強い調整力を与えることも検討されるのでないか。加藤先生の言うとおり非常に縦割になっている、そこに基本法で横串を通すことは大変に意義がある。それから給付と負担との関係を国民がどう考えるか明確にしないと今後の議論は進められない。自助、共助、公助のバランスをどのように考えるのか、その際に社会的弱者への配慮は特段になされる必要がある。診療報酬もEBMを誘導するようにする必要があろう。適切な医療が行われている医療機関は評価されなければならないし、ブラックボックスになっている所にも光を当てるような配慮が必要だろう。4番目の柱に関しては、医療というのが当事者意識の育ちが最も遅れた分野であると思っている。政策決定過程に患者さんが入って行くというのは当然であり、一方で患者さんの成熟も必要。アクセス、コスト、クオリティの全てを満たすことは難しいのだから個人の利益を超えて地域全体のことに思いをいたす、そんな風になっていただきたい。そのためには学校教育でも医療教育を推進していくことが必要だろう」