「薬害を防ぐのは組織でなく人」 薬害検証委インタビュー①
先般お伝えしたように、『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』が2年目に入った。医薬品行政のあり方を検討すると称して組織論が始まったのだが、どうも唐突な印象を拭えない。当の委員たちはどう考えているのか知りたいと考え、正反対の立場にいそうな、医薬品医療機器総合機構(PMDA)審査官経験のある堀明子・帝京大学講師と薬害サリドマイド被害者である間宮清氏の2人にインタビューしてみた。(川口恭)
ちなみに、このお二人は共にロハス・メディカル誌6月号にご登場いただいている。まずは堀講師から。間宮氏の分は明日お届けする。
――検討会は、医薬品行政の組織のあり方に検討課題が移りました。傍聴していて違和感を覚えたのですが、薬害を防ぐには何が必要だという合意はできたのでしょうか。
それ以前の問題として、薬害とは何かの定義も不明確なまま、肝炎に特化して議論が進んでいます。薬には副作用が必ずあるので、どこまでが副作用でどこからが薬害なのかを整理しないと、意味のある議論はできないと思います。
薬害肝炎の場合、薬の品質そのものに問題がありましたが、現在の大多数の患者さんが受けている医療では、少なくとも現時点の科学水準において品質は担保されています。当時と時代も変わってますし、肝炎の事例で当時起きたことだけから導きだした教訓を、現在のあらゆる薬、あらゆる治療に一般化しようとするのは危険だと思います。
今後、本気で薬害を防ぎたいと思うのなら、当時の状況の中でこれとこれは既に解決された、これはまだ解決されていないという切り分けや、逆にあの時代にはなかったけど今はこういう問題があるとか、薬害肝炎ではなかったけど、他の薬では、こういう問題が起こりそうだといった洗い出し、そういうことをする必要があります。やってもやっても尽きないはずです。それなのに、そういう議論が抜け落ちています。
委員構成が、薬害の被害者と昔の審査官、被害者と医療者というように対立構造にある人を集めた影響もあると思うのですが、冷静で具体的、建設的な議論ではなく、ともすれば情緒に流れてしまっていると思います。事務局も優秀な人たちが入っているのに、今回は自分たちが俎上に上がっていることもあってか、まったく交通整理できていません。
結果として、薬害が起きたらその責任を誰が負うんだとか、誰が賠償するんだという話ばかり。どうやったら副作用を薬害にしないかという議論がスポっと抜けたまま来てしまいました。
――やっぱりそうですよね。
患者さんも含めて医療現場の方々が内容を知ったらビックリするような、日常の医療行為を厳しく制限する話をしています。あれだけの影響のある話を、あの会議で決めるのは越権行為と思いますし、決めても実効性はないと思います。もし、どうせ実現しないんだから好き勝手なことを提言させようというつもりなら、そもそも議論するだけ時間の無駄とも思います。
現実問題として、この先に起こりそうなことは、誰のため何のためか分からないような組織やルールだけができることです。そして、大多数の普通の患者さんが迷惑することになるんでないかと心配しています。
もっと多くの医療者や患者さんに、この検討会に注目し、注文をつけてほしいと願っています。