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社会状況の違い踏まえ国際比較の議論を-日本小児医療政策研究会

 「妊産婦死亡率、新生児死亡率などを議論するにしても、未成年出産数や平等指数など、各国の社会状況や歴史的経緯などを考えなければ国際比較はできない」―。国内で医療制度や政策について議論する際、海外の事例やデータが引き合いに出されることは多い。保健医療政策に詳しい森臨太郎・大阪府立母子保健総合医療センター企画調査室長の日本小児医療政策研究会での報告から、国際比較を考える場合の考え方のヒントを聞いた。(熊田梨恵)

 森氏は、英国で医師として働き、サッチャー政権下の医療費抑制政策が引き起こしたとされる"医療崩壊"以降の国の政策立案にも携わった経験がある。現在は日本小児科学会の小児医療提供体制検討委員会の委員長を務めるほか、民間の非営利シンクタンク「構想日本」で医療システム改革の政策案づくりにも関わっている。医療政策などについて議論する場合の「前提」について、森氏の報告を聞いた。
 
 
以下は、森氏の報告内容。(添付した図表はすべて森氏のスライドを基に作成)
 
 
今まで海外の小児医療を経験してきた。それをそのまま移植するのは大間違いだろうと思っている。日本の医療はみんなで一生懸命走ってきて袋小路にいるような感じだと思うのだが、海外の小児医療というのは「鏡」だと思う。自分の姿はなかなか自分では見えないけども、鏡を通して私たちの小児医療、日本の小児医療を見てみる。そうするとこの先どうなるかがなんとなく見えてくるのじゃないかと思う。イギリスなどのことを紹介させて頂き、小児科学会でそれに対してこんなことできるのではないかということをご紹介させて頂こうと思う。
 
まず最初に、医療提供体制といっても色々あるので、系統的に考えないといけないと思う。国際保健の世界では医療提供体制と言うと保健医療制度の話になるが、この6つの柱、要素になる。▽提供体制▽人的資源▽財政制度▽医療情報▽医療機器・医薬品▽ガバナンス―こういう要素に分けて考える。
 
今日は提供体制に加え、人的資源についても話したい。保健医療制度には▽保健サービス▽医療サービス▽疾患特異サービス―など色々違うサービスがある。今日は特に医療ということに絞って話をさせて頂こうと思う。
 
 
日本が比較しやすいのは英語圏だが、それぞれの基礎保健指標として、WHOの指標を前提として挙げた。
 
基礎保健指標.JPG
 
日本は人口当たりの医療費が非常に少ないのは事実。基本的には似たようなレベルではあるが、WHOとかOECDとか、統計によって違う。アメリカだけ飛び抜けて多いのだが、他は私的負担が少なめ。他の国、英語圏の国と比較する時に気にしておかないといけないのは社会状況が随分違うということ。例えば、ジニ係数。これは平等指数といって、社会の平等を示すレベル。日本は一番低いので、一番平等に近い社会であるということ。社会状況を見ると、未成年の出生率が随分違う。「新生児死亡率が」「妊産婦死亡率が」と言うだけではなくて、社会の状況とか歴史とか経緯とか。こういうことも考えないと国際比較というのはできないと思う。それを前提にしながら、日本は社会主義的という話があるが、それはそうなんだという面と、そうじゃない部分があると思う。その辺の前提としての話をする。

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