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「診療ガイドライン」めぐり議論沸騰 ─ DPC評価分科会(7月6日)

■ 「客観的なデータの集め方はないのか」 ─ 小山委員
 

 「診療ガイドラインを考慮した診療体制確保」の調査について、厚生労働省は次の7項目を提案した。

① 治療方針の決定に当たり、診療ガイドラインを参考としている程度
② 患者に対する治療方針の説明等での、診療ガイドラインの利用の程度
③ 実際に参考としている診療ガイドライン名称
④ 参考としている診療ガイドラインの選択基準
⑤ 診療ガイドラインに沿わない診療を行う場合の、適否の判断方法 (病院として設置する委員会での判断/複数診療科によるカンファレンスで判断/診療科毎のカンファレンスで判断/担当医師の判断等)
⑥ 患者及び職員が、診療ガイドラインを閲覧できる体制の整備状況
⑦ クリティカルパスの作成及び利用状況について (クリティカルパスの種類、対象病名、対象患者数等)
[西岡清会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
 ただ今の(保険局医療課の)説明について議論したい。どうぞ、齊藤委員。

[齊藤壽一委員(社会保険中央総合病院名誉院長)]
 「① 治療方針の決定に当たり、診療ガイドラインを参考としている程度」の具体的なイメージについて。

 例えば、診療ガイドラインを作成した先生がいるような病棟では、今さら「参考」にしなくても熟知している。また、常時同じような病気を診ているような先生は、例えば平成21年版が出るとパラパラ見て、2~3日で「全部分かった。今度はこう変わったんだな」ということで、それ以上は(診療ガイドラインを)開くことはないかもしれない。そういう状態は、「参考としている」といえるのだろうか?

[厚労省保険局医療課・長谷川学課長補佐]
 実は、いろいろな議論を経て、「参考」とした。当初は診療ガイドライン通りの治療をしているかどうかを聞くのが適当かと思ったが、あくまで、個々の患者さんの実態に合わせて治療されていると思うので、「参考」とした。ドクターが診療ガイドラインの内容を承知した上で治療している場合は、「参考としている」に含まれる。

[齊藤委員]
 なるほど。あえてその本を見なくても、(診療ガイドラインの)内容を熟知した人が診療していれば、「参考としている」ということになる、そういう意味だろうか?

[長谷川課長補佐]
 私どもはそう考えているが、本日、議論いただければ。

[小山信彌委員(東邦大医療センター大森病院心臓血管外科部長)]
 「参考としている程度」という表現について。「程度」の定義は? どの程度が良くて、どの程度が中間か、具体的に示さないと、その判定が......。
 自分たちは十分に参考にしているつもりでも......というのがある。客観的にどんなプライテリア(基準)で考えているのか。

 (西岡分科会長ほか、「難しい」と苦笑いする委員あり)

[長谷川課長補佐]
 大変、難しい問題だと考えている。(質問票では)「大いに参考にしている」「中程度参考にしている」「わずかに参考にしている」(などを尋ねる予定だが)これはドクター側の主観面の判断。

 その医療機関がどの程度、診療ガイドラインを参考にしているかを第三者が客観的に判断するのは難しいと思うので、まずは医療機関の主観で答えていただくのが適当だと思う。

[小山委員]
 そうすると問題なのは、その主観が(新たな機能評価)係数になること。係数のつくり方によっては、右に行ったり左に行ったりしてしまう。そこはどのように解決するのか。

 つまり、診療ガイドラインをとても参考にしているのが「良い子」だとすると、みんなこっち(良い子)に行ってしまうと思う。主観だけ、ということになると、非常に難しいと思う。もう少し、客観的なデータの集め方はないのだろうか。

[齊藤委員]
 僕は日本糖尿病学会の専門誌を見るが、あるいは糖尿病を多く診る(財団法人)朝日生命成人病研究所(附属丸の内病院)の先生方もよく知っているが、ガイドラインなんて恐らく見ないと思う。
 それは100も承知で診療しているというよりは、自分の頭の中に叩き込まれていて、「今度のガイドラインであそこを少し変えないといけないな」と思いながらすぐに1、2年経つ。

 だから、(診療ガイドラインを)参考にしているか、反映させているかという水準のイメージが少しつかみにくい。よほど適切な設問を立てないと、「何を聞かれているのかさっぱり分からん」ということになる。

 僕は糖尿病の専門医で、毎日20人ぐらいの患者さんを診ているが、ガイドラインはめったに見ない。新しいインスリンが発売された時に調べたりする程度。あとは、10年前や20年前に聞いたことが違う表現で書いてある程度だから、そういう心情をどのように(新たな機能評価係数に)落とし込むか。

 例えば、外保連(外科系学会社会保険委員会連合)の先生方もそんなことは100も承知で、「これからはバリエーションでいろいろなことに対応していくのが一番大事だ」ということをよく聞く。

 (新たな機能評価)係数に落とし込むには、よほど適切な手順がないと、「形だけ」ということになりかねない。

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