「診療ガイドライン」めぐり議論沸騰 ─ DPC評価分科会(7月6日)
■ 「レシピから離れることでいい料理ができる」 ─ 相川委員
[山口直人委員(東京女子医大)]
元の議論に戻ってしまうようになるが、「診療ガイドラインを参考としている程度」について。
これが「非常に曖昧である」との意見があった。私も、もう少し厳密な取り決めや客観性があった方がいいと思う。ガイドラインはすべての疾患にあるわけではない。そもそもガイドラインがないということも大いにあり得る。
臨床試験などで研究的な治療を行っている場合には当然、「ガイドラインを参考にできない」ということだと思うので、「参考にしていない場合」の内訳の1つが個人的な立場や意見。「ガイドラインはけしからん」と言って使わない医師もいると思う。(他の委員、笑い)
それから、「ガイドラインを参考にしている」ということが、短絡的に「従えばいい」と考えられてしまうことはむしろ弊害だと思うので、「参考にした上で従っている」というパーセンテージはアメリカの調査では6割ぐらい。
100%がいいということでは決してないので、「参考にした上で従っているパーセンテージ」と、「参考にした上で結果的に従わなかったパーセンテージ」を厳密に数値として把握した方がいいと思う。
(委員、ざわつく)
[西岡分科会長]
それは......、ものすごく負担を強いる調査になってしまうと思う。おっしゃっている意図はよく分かるが......。調査するには、医療機関の負担が大き過ぎるのでは......。
齊藤委員、どうぞ。
[齊藤委員]
私の病院は最近、日本医療機能評価機構の(病院機能評価の)調査を受けた。そうすると、会議の議事録や院内の表示板、医療安全対策など、病院として大事な機能が列挙してある。そういうことの中の1つに、ガイドラインがある。10から20ある項目の中のワンオブゼム。
確かに、質の高い病院に高い係数が付くという総論は分かるが、あえてここで......、ガイドラインとかクリティカルパスというものだけが独り歩きして、「病院の高い機能を反映しているんだ」ということについては、ちょっと解せない。やや唐突な感じがある。病院の高い機能を裏付ける活動は非常にたくさんある。事故が起こった場合の連絡体制など10、20とある。その辺で何か唐突感があることが否めない。
[小山委員]
これ(ガイドラインなど)を念頭に置いて治療していることが大事だと言うなら、あまり細かいことは言わずに、ザックリとした形で、「診療ガイドラインを頭の隅に置きながら治療していることが大事だ」ということで、「何パーセントが守っているかどうか」よりも、ザックリとした形でやればいい。
例えば、この患者さんはバイパス(手術)をした方がいいのか、(侵襲度の低い)PCI(カテーテル治療)をした方がいいのかという場合に使うのがガイドラインというイメージが強い。だから、診断時と治療後などをあまり細かく分けず、もっとザックリで、世に出回っているガイドラインを頭に置きながら診療しているかを評価するのであれば、(厚労省案の)項目でいいのではないか。
「あまり深くほじくらない方が幸せなんじゃないかな、お互いに」と思うが、どうだろうか。
[熊本一朗委員(鹿児島大医療情報管理学教授)]
(調査の)負担を考えないと。診療ガイドラインは、「プロセス(過程)」よりも「ストラクチャー(構造)」、体制を見ようとするもの。
(松田委員、腕組みしながら聞いている)
(調査の)負担がかかった割にデータの解釈に難しい面が残ってしまうので、もっとシンプルでいい。
[相川直樹委員(財団法人国際医学情報センター理事長)]
ガイドラインは、多くの病院が守ればかなり良いレベルの診療ができるというもの。それ(ガイドライン)をあまり逸脱すると、現在の医療あるいはエビデンスのレベルがうまくいかないので、できていると思う。
そうすると、大学病院のように「もう少しレベルが高い」......と言ってはいけないが、いろいろな複雑な患者さんが来て、ガイドラインに書かれていないような患者さんが非常に多い病院、あるいは「治験」とは言わないが、新規の治療法、つまりガイドラインをさらに進歩させるために新たな治療法を検討しなければいけない病院は、ガイドラインを無視するわけではないが、参考にしているが、それと違うことをやらなければいけないということが随分あるのではないかと思う。
今日はオープンなので例えで恐縮だが、お料理の仕方でもレシピというのがあって......。しかしながら、料理人で特別な人は、そのレシピから多少離れたことをやることによっていいお料理が提供できる。例えで恐縮だが、そういうこともある。
ガイドラインを守る、あるいは参考にする率が高ければそれが病院の機能を反映するということになると、高度な医療あるいはガイドラインに分類されないような病態の患者さんが来た場合に非常に困るということもあるので、その辺のことも調査した上で......。
大学病院あるいは病床数などによって準拠率が逆のこともあり得るので、調査結果を見て、将来、「機能評価係数」に反映するときに考慮していくべきと思う。
[西岡分科会長]
ガイドラインに関してかなりいろいろな意見を頂戴した。これはまた......。
(宇都宮企画官、挙手)
あ、どうぞ。
[保険局医療課・宇都宮啓企画官]
相川先生、あるいは齊藤先生の指摘に答える形で話したい。DPCの評価の中で、「標準化についてどうするか」というのが1点。
それから、今後(新たな)機能評価係数を考えていく上で、高度急性期を扱うような大病院が評価されるような係数も当然あるだろう。一方、地域で急性期を担っている中小病院が取れるような係数もあるだろう。
そのようなことを考えたとき、1つは標準化という観点、もう1つは、当初(DPCが)始まったときの82の特定機能病院、144の大きな病院という段階ではなく、今年度は(DPC対象病院が)1283病院で、大変小さな病院やケアミックスの病院が(DPCに)入っている中で、つまりそのような病院は大学病院の機能とはまた違っていて、"コモンディジーズ的なもの"(頻度の高い疾患)をたくさん診ていると思う。
そういう病院についての機能の評価の仕方も考えなくてはならないというバックグラウンドで、「医療の標準化」あるいは「診療ガイドライン」「クリティカルパス」という話が出てきたとわれわれは理解している。
決して、「これを特定機能病院に当てはめよう」とか、そういう話ではなく、やはり現在、かなりDPCの状況が変わってきている中で、どういうものが評価できるか。そのためにまず調査をしてみて、使えるかどうかは結果が出てみないと分からないが、そのようなスタンスであるということはご理解いただきたい。
[西岡分科会長]
ありがとうございます。
(酒巻委員が挙手)
えっ? まだガイドライン? もうガイドライン、やめたいんですが......。(会場、笑い)
じゃ、この(厚労省が示した)項目で調査することは皆さん、ご異存はないと思う。それを係数にするかどうかが一番の問題になっている。
そうではなく、この内容に関して、事務局(保険局医療課)で再度(調査票に)具体化していただき、調査を実施する方向に持っていきたい。ガイドラインに関してはこういうことでよろしいだろうか。
(了承、以下略)