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国立大学医学部長会議が自・民・公に要請書

 全国42の国立大学医学部首脳でつくる国立大学医学部長会議が常置委員会名で21日、自民、民主、公明の3党に要望書を出した。医師数増、国立大学医学部定員増、医学部教職員増、大学設置基準見直しと高等教育費増、大学病院の借入金解消などを要望している。(川口恭)

 要望の項目は以下の通り。
1)人口あたり医師数を国際水準まで引き上げる
  国立大学医学部入学定員を計画的に増員する
  医学部教育の質を維持するため学生あたりの医学部教職員数を国際水準まで増員
  定員増に見合った教育施設の整備、教育経費の措置をする
  大学設置基準を見直し、高等教育費を国際水準に増額する
2)メディカルスクール構想に反対
3)医学部に起点を置く研究医養成のための具体的施策を直ちに進める
4)国立大学全体で1兆30億円ある大学病院の借入金解消と運営費交付金の増額
5)低医療費政策を改め医療費を国際水準まで引き上げる
6)上の項目すべての実施。一部のみの実施はむしろ事態を悪化させる可能性がある

 要望書の提出・送付後に記者会見した常置委員長の安田和則・北海道大学大学院医学研究科長は、その趣旨について以下のように説明した。
「国立大学医学長会議は過去にも何度も政府に対して提言を行ってきた。しかし昨年や今年の施策を見ると医学部定員増のみが行われ教育の質の維持への措置はなされておらず、地域枠の導入で問題が複雑化するなど、提言の本質を理解していないのでないかと思わざるを得ない。一方で国政選挙に向けて各党からもマニフェストが出たが、どのマニフェストにも教育の質を維持するための措置を明言していない。このままでは質の高い医学教育は一気に瓦解し医療崩壊がさらに進むことになる。これを座視していることはできない、と今回提言を行い、その理解と実施を要望する」

 上にも述べられているように、要望に先立って「大学医学部の教育病院のあり方に関する検討委員会」で各党のマニフェスト内容を検討したという。そして特に自民党と民主党に関しては、評価も公表した。

その評価のまとめ部分は、自民党に対するものが「具体的政策が明記されておらず、また、従来からの国立大学医学部長会議の意見が全く反映されていない。特に、医療に関しては医療崩壊を止める施策が見えない事は残念である。医学教育に関しても、医学研究の崩壊への危機感が感じられない事は大変遺憾である」と厳しい採点になっており、民主党のものに対しては「医療に関しては、かなり現場の問題点を把握しており、具体的な施策が盛り込まれている。国民が納得する医療が実現できる可能性を感じさせるマニフェストになっている。教育に関しては、卒後研修制度に関連する現場の問題点、すなわち基礎研究の崩壊や高度先進医療の衰退傾向といった問題が充分には理解されていないと感じられ残念である。ただし、運営費交付金や教育費の問題を、国際基準をもとに具体的に提言しており、大いに評価できる」と若干の留保つきながら高めの採点になっていた。

このマニフェスト評価に携わった嘉山孝正・山形大学医学部長と安田氏の2人は、この日の午前中に民主党の鈴木寛・政調副会長のもとを訪れ、要望書を手渡し、マニフェストの評価についても説明した。民主党だけ直接面談になったのは、「たまたま議員が会ってくれたから」(安田氏)だそうだ。

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