〔新生児医療の教育現場から④〕大学病院にNICUを充実させるのは今―教育と人材確保を
■大学=教育・研究、周産期センター=多くの臨床を経験
――大学病院だからこそできること、というのをもう少し詳しく教えて下さい。
大学には難しい症例の患者さんが来ますよね。大学には脳外科や心臓外科など、さまざまな専門科がありますから母体救命に対応できます。妊婦さんが精神疾患や内科疾患を抱えていることもありますし、早産以外の合併症に対応できるのは大学病院ならではだと思います。
また、大学には最新情報が集まりますし、研究をしたいという若い人たちは多いです。大学にもっと余裕ができて研究ができれば、研究者も増えて、世界に日本の医療の素晴らしさをもっと発信していけると思います。
大学病院は周産期母子医療センターほど忙しくなくていいと思っています。NICUの病床数も多過ぎることなく、もっと余裕を持って学生がゆっくり実習できたり、スタッフが研究できたりする環境だといいと思います。たくさん臨床を診てハードに研修していきたいという人がセンターに行くというふうにすみ分けできていくといいと思います。
――そうするためには、何が必要でしょう。
やはり、新生児科が標榜科になることだと思います。そうすれば大学でも教える雰囲気作りができますし、今の新生児医学は寄付講座でされていますが、独立すれば新生児科としての講座が持てるようになります。小児でも小児神経や小児循環器などは独立しているので、新生児科もそうしていくべきだと思います。新生児期からの病気は多いです。新生児期に分かる病気も増えましたし、各分野へのつながりが多いです。私が阪大に来た頃も、新生児全体を診ることができると、「助かる」ことを知っているので、他の先生との兼ね合いでもどかしい思いをすることもありました。他の専門の方たちにもっと理解して頂きたいと思います。内科や外科などと同じように大事な分野だと思ってもらいたいです。
■「スーパーマン」でなくても普通に働ける科に
――大学病院の中で新生児科が独立し、教育・研究機能という役割がはっきりしていけば、新生児医療も変わっていくかもしれませんね。
新生児医療については、普通に「赤ちゃんが好き」というぐらいの気持ちでも携わることができるような余裕ができていってほしいです。もしもっと大学が充実すれば、産休や子育て中の女医が研究スタッフとして関わることも可能だと思います。
日本の医療レベルは十分に高いですから、これ以上を突き詰める必要はないと思います。今までのように"スーパーマン"の医師でなければ働けないというのではなく、今の医療レベルをキープしていくことで十分ですし、これ以上高めるのは難しいと思います。だから、一人でも多くの方に新生児科に入ってもらい、働き続けてもらえるようにすることが重要です。そのためにも、大学病院の教育機能を高め、人材確保につなげていくことが必須だと思います。
(略歴)
1987年 大阪大学医学部卒業
同年 阪大附属病院小児科研修医
88年 淀川キリスト教病院小児科医員
90年 大阪府立母子保健総合医療センター新生児科勤務
95年 留学(Harbor-UCLA research fellow)
97年 阪大医学部小児科助手
2009年 阪大附属病院総合周産期母子医療センター講師
〔特集・新生児医療の教育現場から...終わり〕