出産育児一時金 直前見直しの理由 足立信也政務官
出産育児一時金の制度一部見直しに関して、足立信也・厚生労働政務官の説明は以下の通り。(川口恭)
まず今回の制度変更は、舛添要一・前厚生労働大臣が、妊婦さんに安心して出産していただくための環境を整えたいという趣旨で、一時金を増額すると共に、妊婦さんが後で戻ってくるとはいえ多額の現金を用意しなくても済むよう、妊婦さんを介さず健康保険から医療機関へ直接払いされる形態へと変更したものです。その理念は素晴らしく、我々も全面的に賛同しています。
ただし、妊婦さんに安心して出産していただくという目標を考えた場合に、出産する場である医療機関が安定して出産を扱えるということもまた欠かせません。妊婦さんの安心と施設の安心、両方が必要です。もし、出産の場が存亡の危機に瀕するようなことになれば、かえって妊婦さんの利益を損ねます。ところが、今回の制度変更で、分娩取り扱いをやめざるを得ない医療機関が出るかもしれない。これは食い止めなければならないということで、今回、一部制度の見直しを行いました。
実施直前になってバタバタと見直しをせざるを得なかったのは、次のような経緯です。
厚生労働省によると、日本産婦人科医会など団体・組織への説明は5月に済ませていたそうです。ところが、実際に分娩を取り扱っている現場への説明が始まったのは8月に入ってからで、具体的にどういう制度なのか、導入の結果何が起きるのか現場の人たちに認識されてきたのが、やっと8月後半からでした。産婦人科医の間ではすぐに壊滅的に大変なことになるという話になって、総選挙の結果が出る前から民主党にも多くの声が届くようになりました。
そうした声を受けて我々なりに分析を始めてみたところ、この制度は妊婦さんにとってはメリットが大きい、しかし産婦人科診療所にとっては未収金が減るかもしれないというメリットは確かにあるけれど、収入が事実上2カ月分断たれるという点と事務作業が煩雑すぎるという点で、メリットを遥かに上回るデメリットがあると分かりました。
すぐに、我々は収入のタイムラグをなくす方策がないか検討しました。しかし制度開始まで1ヵ月ない、そんな短期間でタイムラグをなくすことはできないと分かりました。そして、事務作業自体が間に合わないという施設もある。だとしたら、どうしても準備できないという所に、無理やり導入しろとは言えないのでないか、こういう判断になりました。しかし一方で、制度導入を凍結するかと言えば、多くの妊婦さんが期待を抱いていることを考えれば、それもできない選択でした。