壊れているのは医療ではなく社会 医療構想・千葉シンポジウム①
浦安住宅管理組合連合会の工藤氏
「浦安には集合住宅が数多いのだが、その中で古いものは30年経とうとしていて、高齢化の問題がかなりクローズアップされてきている。地域医療の問題はどのように認識されているか」
竜
「この会は、全国で初めて地域主体に皆で考えていこうという機運が高まってできたものだが、米国では街の中心に病院があって、その周囲に学校や研究施設などもあるというのが一般的。これについては『医療クラスター』と称してがんセンター中央病院の土屋先生(院長)が、築地の魚市場が移転したら、その跡地に一大医療クラスターをと提唱している。そのお話を伺って千葉でも作れるとしたらということで考えてみると幕張ができるだろう。地元でその機運が広がっていけば実現不可能な話ではない。決して大きな病院を作る必要はない。光ファイバーでいくらでも連携できるのだから。私が知事選に出ようかと思案した時に考えたのは、IHNで運営主体は異なるにしても地域ごとにいくつかの病院が連携すればということだった。浦安も市民病院などがある。連携すれば地域を支えることは十分に可能だろう。ただし、そのような連携には国や県の指導力が必要。千葉県がんセンターで子供を預け替えようとしたら始末書を取られたということがあった。運営主体が異なる機関と連携しようとすると障害にぶつかるという、ここをブレークスルーしないと地域医療もない」
増山
「宇都宮さんと工藤さんの質問と合わせる形で一言。宇都宮さんがメディカルの国際化を相当に考えていると知っている。このように地域に現場の具体的なことを知っている人が必要で、もう一つ国のシステムが必要。外国の患者を呼ぶという時には、厚生労働省以外に国土交通省や観光庁、経済産業省などのリーダーシップもないと動かない。それから国際化する時には、国際的なものを受け入れるコミュニティがないとできない。成田にはそういう国際感覚を持ったコミュニティがあると思う。浦安にもあるだろう。医療機関側も、そのシステムつくりをやっていかないといけないだろう」
竜
「地域医療に関して江角先生いかがか」
江角浩安・国立がんセンター東病院院長
「いきなりの指名で驚いた。浦安の方の言われたことは、既に柏で起きている。昭和30年代にできた団地がかなりあって、独居老人が多く、そういう方たちが孤独死するという事件もある。私は専門ががん医療なので、地域で緩和ケアをという運動をしているが、やっているとつくづく崩壊しているのは医療ではなく社会だということを痛感する。受け皿の側が壊れているから、在宅でといっても無理な話になる。今さら産業構造を変えてというのは我々が言っても無理があるので、もはや核家族化はどうにもならない。であるならば、まちづくりをもう一度やり直して、隣近所の人が長屋方式でお互いに面倒をみるような風にしないと地域も再生不可能でないかという気がする。緩和を在宅でと言ったところで独居老人では、そもそもどうしようもない。隣近所の人が仲良くしている人の面倒をみるというようにいずれいかなければ立ち行かなくなる。
私は団塊の世代で竜先生はもう少し上。この大量に存在する世代をどうやって面倒みるのか街作りからやり直しておかないと15年後には日本の国全体が崩壊してしまうのでないかという危機感もある。とは言いながら、その世代だけに照準を合わせてしまうと、我々が死んだ後に夏草だらけになる。相当に戦略的な取り組みが必要だろう。先ほどから出されている意見に医療の側からもう一つ視点を付け加えるとしたなら、こういう問題を考える時に、どうしても医療側からの論理、行政側からの論理というサプライヤー側の視点ばかりになる。コンシューマー側からも、この問題を考えていかないといけないだろうと思う」
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