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「公知」による日本での適応拡大 米誌が論文掲載

 治験なしの「公知」で医薬品医療機器総合機構(PMDA)が薬の適応拡大を認めた例について検討・評価した論文が、このほど米臨床腫瘍学会誌(Journal of Clinical Oncology)に掲載された。論文の第一著者は、「医療に関する行政判断に対して学術的検討を加えた例は世界的にも珍しいと思う。法の分野で、判決に対して判例研究が盛んに行われていることを考えると、今後はこのようなアプローチの重要性が高まっていくだろう」と話している。(川口恭)

 論文の第一筆者は、成松宏人・山形大特任准教授。

 99年に慢性リンパ性白血病の治療薬として承認を受けた「フルダラビン」が昨年、造血幹細胞移植の前処置用薬剤として適応拡大された際、何を根拠に承認したかを考察。治験データが全くなく、しかし既に国内外で広く使われているという状況の中、担当者が学会リーダーなど少数の権威の意見と臨床界のコンセンサスを拠り所に承認し、事後調査で安全性を担保する手法を取ったことを評価した。

 医薬品の適応外使用は、査定されたり混合診療に問われたりする恐れがあることから医療機関によっては二の足を踏み、それが一種のドラッグ・ラグを生んでいる現状がある。また、必要なものは速やかに治験を行って適用に加えるべきであって、適用外使用は原則として認めるべきでないという提言が薬害肝炎検討会で出されたりもしている。とはいえ、稀少疾患などの場合にメーカーが自ら承認申請すると損失が出てしまうわけで、その隙間を埋めるためとして推奨されている医師主導治験も成果を出せていない。

 PMDAがその袋小路を突破しうる判断を行ったこと、それをまた第三者が学術的に評価したことの二つが相まって、インパクト・ファクター15という一流誌のエディターも論文採用の判断をしたようだ。

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