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本来の「医療」が発揮されるよう、周辺サービス充実を-経産省来年度予算要求

 「本来医療保険でカバーすべきでない部分を厚労省にやらせようとするからおかしくなる。疾病や介護予防、在宅での慢性期医療などについて、すでにノウハウを持っている民間の力を生かして周辺サービスを充実させていけば、本来の医療や介護を成り立たせることができ、国民の満足につながる」-。経済産業省は地域ぐるみの健康サービス事業や慢性期医療の支援事業などを国内で展開していくため、来年度予算の概算要求に32億円を計上。医療や介護のインフラ構築に乗り出した。(熊田梨恵)

 経済産業省は、2010年度予算の概算要求で、地域に医療や介護サービスのインフラを構築していくためのモデル事業を新規で実施する「安心ジャパン・プロジェクト」事業に、32億円を計上した。具体的には、慢性期医療の分野で、リハビリや看取り、在宅医療を行う看護師の開業、移動・移送、住宅産業など様々な生活サポートなどを行うサービスや産業のモデル事業を考えている。このほか、疾病予防や介護予防の分野で、外食・配食やフィットネスなどを行うサービスや産業も想定されている。1件につき約2億円として、計10件の採択を予定している。
 
 経済産業省が支援する事業はこれまで、iPS細胞や地域の見守りネットワークシステム、介護ロボットなど個別分野への支援が主だったため、地域の医療や介護の「インフラ」自体の構築に乗り出すのは初めて。特に今後団塊の世代の高齢化に伴って拡大が見込まれる介護予防が必要な高齢者と、脳卒中や交通事故などでリハビリが必要になる慢性期患者へのサービス提供が重視されている。
 
モデル事業イメージ図.JPG この事業を担当する商務情報政策局の藤本康二サービス産業課長は、次のように説明する。「医療保険でカバーすべきでないところを経産省でやっていこうということ。今後の医療需要の中でも、終末期を含んだ慢性期の需要を見ると、生活を支援する機関と、医療機関と介護事業所が一緒にないと成り立ちません。国民は医療について治療はもちろん、生活に踏み込んだアドバイスなども求めますが実際にはそうなりません。とても相性の合う医師に出合えれば幸運ですが、慢性期医療は生活への支援なども含めたトータルなシステムとして提供されるわけではないので、そこが患者や家族にとっての不満になるのではないでしょうか。医療は医療として提供され、周辺のサービスについては患者が選べるようにしていくべきだと思います」
 
■国が示すのは「やり方」ではなくて「目的」
 藤本課長は、「供給が分かり切っているところは計画経済でもいいが、何を供給していいのか分からない部分があるとしたら、そこは市場経済がいい」と話し、施設での看取りを望む高齢者が病院に搬送されて亡くなっていくケースを「需要と供給が見合っていないものの典型では」と例示する。国が示すのは、あくまで「インフラ整備」という目的のみとして、地域の実情に応じた看取りのサービスのほか、慢性期患者を介護する家族の負担軽減になるスポット的なサービスなど、生活支援になるものがモデル事業として考えられるという。「日本は目的の分からないルールが多過ぎて、特に医療は細かいところまで決まっているので医療機関は閉塞感があります」として、保険診療でない部分は自由な提案に任せ、国は支援に留めておくのがよいと話す。保険料で提供される医療と、税金で賄われる社会保障サービスがはっきり分かれると医療費の使途が国民から見えやすくなる効果もあるとして、厚労省と棲み分けた連携ができていくと主張する。
 
 
 経産省は今年度の補正予算に9.8億円を計上し、介護予防や疾病予防関連の6事業を試行した。医師会や地元商店街、保険者やフィットネス関連の企業などが連携して介護予防に取り組んでいる事業などが採択されている。熊本県植木町の地域では、熊本大医学部や日赤熊本健康管理センターが医療機関として参加し、地元の観光旅館組合が協力して温泉を使った日帰りの温泉療法、地元商工会による弁当の宅配や、飲食店での健康に配慮したメニューの提供などの地域ぐるみでの疾病予防サービスが実施されている。
 
  
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