「二次救急はレベルがさまざま」 ─ 4000億円は地域の中核病院へ?
救急患者の受け入れが困難なケースを減らすため厚生労働省は4月の診療報酬改定で、プラス財源のうち約4000億円を救急医療などに投入する方針を示している。全国に約200ある「救命救急センター」の診療報酬が増額されることはほぼ確実とみられるが、問題は二次救急を担う地方の中小病院。厚労省の担当者は、「二次救急はレベルがさまざま」と述べ、一律に評価することを否定している。(新井裕充)
4月の診療報酬改定に向け、厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協、遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は1月27日、「救急医療管理加算」や「ハイリスク分娩管理加算」など個別項目の議論に入った。
厚労省はこの日、診療報酬の改定財源約5700億円のうち約4000億円を充てる急性期の入院医療について改定案を示したが、診療側の委員から「地域の格差が拡大する」など、地方の二次救急病院が切り捨てられる改定になることを懸念する意見もあった。
また、地方では重篤な救急患者を受け入れる「救命救急センター」と同等の役割を果たしているにもかかわらず、基準が厳しいために指定が受けられない病院があることを指摘する声もあった。
救急医療に取り組む地域の中核病院を評価する「総合入院体制加算」(旧入院時医学管理加算)について、茨城県医師会理事で日本医療法人協会副会長の鈴木邦彦委員は、「私どもの茨城では取れている病院が1つもない。人口300万人の県で1つも取れないような加算(の要件)をそのままにしておくと地域の格差が拡大する」と述べ、要件を緩和するよう求めた。
これに対して、支払側の白川修二委員(健保連常務理事)は、「いろんな地域にいろんな問題がある」と理解を示しながらも、「全国一律の診療報酬の検討ということに際しては、ある程度、言葉は大変申し訳ないが、割り切らざるを得ない部分もある」と反対した。
一方、「救命救急センター」について支払側の勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は「もっと救急を積極的にやっていこうという医療機関が増えていかなければならない」として、「救命救急センター」を増やす考えがあるかを厚労省側に尋ねた。
しかし、厚労省保険局の佐藤敏信・医療課長は「人口規模や効率化などを考えると救命救急センターが山のようにできるのは必ずしも効率的ではない」と否定。さらに、二次救急について次のように付け加えた。
「二次救急は3000を超えるぐらいあるけれども、二次救急というのはレベルが、活動が活発な所とそうでない所までさまざまある。今回の診療報酬では、二次救急の中でもよく頑張っていただいている所、あるいは地域と連携して迅速に関連医療機関に紹介していく医療機関、こういった所にはかなり手厚く配分するように心掛けた。二次救急の中で頑張っていただいている所には相当配慮した」
救急医療に関する同日の議論について、詳しくは2ページ以下を参照。
【目次】
P2 → 「平成22年度診療報酬改定の個別改定項目」を提示 ─ 厚労省
P3 → 「医政局が認めない救命救急センターから壊れている」 ─ 嘉山委員
P4 → 「地域の格差が拡大する」 ─ 鈴木委員
P5 → 「総合的な入院・救急体制でも周りに受け手がない」 ─ 邉見委員
P6 → 「地域にいろんな問題があるが割り切らざるを得ない」 ─ 白川委員
P7 → 「二次救急はレベルがさまざま」 ─ 厚労省課長