PMDA近藤理事長が動く 東大医科研・宮野悟教授(中)
近藤
「うーん。今のようなお話を聞いてしまった後だとあれなんですが、民族差の問題が東アジアの圏内でテーマになっています。民族差にこだわっている時代ではないんでしょうが、しかしとりあえず大雑把な知見の中で、コーカシアンとエイジアンの違いについて共同で見ようかとやっているところです。この仕事は科学的に見るとバカバカシイのでしょうかね」
宮野
「理研の鎌谷(直之)先生が人種ごと、人ごとに、ゲノムレベルの違いを解析をしています。それによると、アジアと言っても、これは沖縄の人、九州の人、中国、関東はずいぶん違うというのがクッキリ見えています。だから、アジアというひとくくりで本当に見れるのかなあ、と思います。1人のゲノム解析が10万円でできるという時代はすぐ来ると思いますし」
近藤
「目の前にそういうものを控えながら民族差にこだわった仕事をするというのは・・・でも話題としては、東アジアというのは日本にとって大事な仲間なんで、そこら辺でチームを組んだ仕事をして、欧米との対比をしていかないといけないと思っているんですね。たとえば共同治験とか。薬の投与量が欧米に比べてかなり少ないというのもあるんです。それはコーカシアンと遺伝的な差があるのか、文化の差なのか、といった辺りも国際的には話題になっているんですよ」
宮野
「素人考えですけれど、治験の時に、ゲノム情報も併せてデータを取るわけにはいかないんでしょうか。ゲノムの情報を完全に無視して、患者に有効だったかどうかだけを見ていくのは、一つ大切なところが抜けているような気がします。ゲノムの情報を取ったうえでデータが出てくれば、今までだったら重篤な副作用で落ちていたような薬の候補が、この人たちには効く、この人たちには適用しちゃいけないよというのがよりよく見えてくるんじゃないでしょうか」
近藤
「実際、欧米の企業は治験の際に必ず血液を採りますね。条件として、その薬との関係を調べるということにはなっていますけれど、でも本当の所どう使われるかは分からない。現実的には治験は、これからはバックグラウンドを探っていくことになるかもしれません」
宮野
「欧米で大規模な治験やって、血液を採っていれば、こんな値段でゲノムのシークエンスができるんだから、彼らは解析すると思いますね」
近藤
「そこで間抜けなことをしていたら、日本の企業は全くなくなってしまいますね。バカ正直というのではなく、個人情報云々と言っていると、本当にガラパゴスになるかもしれません。データは世界の人の共有財産という観点に立たないといけませんね。世界の中の日本、そういう視点で学問の地図を書いていかないと。日本は、あまりに視野が狭いです」
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