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PMDA近藤理事長が動く 東大医科研・宮野悟教授(下)

 近藤達也・PMDA理事長と宮野悟・東大医科研教授の対談。今回は、三澤馨・PMDA安全第一部長も話に加わり「安全対策に使いたいレセプトデータベース・電子カルテ」といったテーマで、一般国民からすると「えーっ!?」というようなことを話しています。

100324misawa.JPG三澤
「市販後安全対策において私どもでやっているのは、副作用自発報告のデータマイニングです。普通の臨床医がやるように一例一例の副作用症例の因果関係を個別に検討するのが基本ですが、副作用と薬の組み合わせ、1人の患者で複数の薬と複数の副作用ということになるのがほとんどですけれど、それを集計して、その中で他の薬剤の平均的な報告割合と比べて明らかに有意差を持って多く報告されている組合せをシグナルとしてキャッチし、さらに因果関係があるかどうか調べて行くという方法論を導入しています。ただ、今のシステムの組み方は、重大なものを見逃すことがないように、漏れがないようにするために閾値を下げてシグナルを多く出すようにしているので、今の体制ではシグナルのすべてをチェックできないという問題点があります。

副作用の自発報告の弱点は、分母がないことです。何人に投与して副作用が出た(副作用の発生率)とか、どんな患者さんに多く出ているとか、そういったものが分からない。レセプトオンライン化で研究のためのレセプトデータベースの二次利用が可能になる予定です。レセプトデータは診療報酬の請求のためのデータですが、薬の安全性をチェックするための情報が引き出せるのではないかと研究、準備を始めています。また、病院の電子カルテの情報をいただいて、当然匿名化した上で、そこから薬の安全性についてのシグナル検出とか、懸念される安全性問題の検証とか、そういうことしていきたいと考え、取り組み始めています。レセプトデータでは、たとえばある薬剤で間質性肺炎が出るというドクターレターが出る前と後で、処方傾向がどれぐらい変化するかとか、ある検査を義務付けるという安全性情報が出た時に、その検査の実施率が上がっているかなどの解析ができるかどうか、研究していきたいと考えています」

宮野
「電子カルテって患者さんのためにあるのかと思ったら、今のお話をうかがっていると違いますね」

三澤
「一つの問題は、病院ごとにテーラーメイドされてしまって、統合するのがきわめて困難という点です」

宮野
「でも、韓国はそれをやったとか聞きましたけど」

三澤
「韓国では、レセプトデータ等の国家レベルのデータベースが医療の向上のための研究に使えるようになっています。この分野では、日本は韓国、台湾に完全に後れを取りました。日本も国民皆保険で同じシステムに乗っかっているのですから、電子カルテを含め、データの標準化や統合はやりやすいと思うのですが、なかなか難しい状況です」

宮野
「なぜですか」

近藤
「ひとつは富士通とかNECとか会社単位で、それぞれマーケットシェアを争っていることがあります。使いにくいんだけれど、そこに互換性のないデータが溜まっていくわけです。皆、ブーブー言いながら買っているんです」

宮野
「不自由を売るビジネスができるわけですか」

近藤
「相互乗り換えのインターフェイスができればいいんでしょうけれど、なかなかそうはできなくて」

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