村重直子の眼16・近藤達也PMDA理事長(下)
近藤達也・PMDA理事長との対談の最終回です。
近藤
「ICHの基準づくりだって、日本がもっとイニシアチブを取って行かないと。とりわけ臨床が関係するところでは。今までは薬事が中心だったと思いますが、もう少し臨床関係の、安全の辺りから入って行くところはいっぱいあると思っています。それが日本の役目だなと」
村重
「それはプレマーケット(市販前)よりもポストマーケット(市販後)のデータ収集に重点を移行するということですか」
近藤
「そうではありません。ポストマーケットにも取り組むというのは私のアイデアなのですよ。ラグやなんかもなくなるように処理していかなければ」
村重
「どうやって」
近藤
「それこそがレギュラトリーサイエンス学会の役割ですね。議論するテーマが、ICH基準などに反映されていく。今までの行政は、依らしむべし知らしむべからずで、いつまで経っても疑問点が続いていたと思うのです。だからレギュラトリーサイエンス学会は、そこを依らしむべしではなく、オープンにする。どういう判断をすべきなのかというところをお互いにディスカッションするわけです。患者さん側も入ってもらうので、これは無視してもらっては困るよとか、この点は注意してもらわないと困るよとか、この点はどんどん言ってもらった方がいいよとか、こういう薬をどんどん作ってもらった方がいいよとか、だけどこういう点は心配だよねという点を、公の場で記録に残る形でディスカッションしてもらう。あそこでこういう風に決めたということが将来行政へ反映されるような、同じ市民社会なのだから、裁く側も裁かれる側も同じ場でディスカッションするということがとても大事で、これは大事な一歩だとおもいますし、これは先程お話した情報公開につながると思います。このようなフランクなディスカッションについては、反対する人もいるかもしれませんが、私はそう思わなくて、やるべきことだと考えている。プロモーターですね。今の段階では、レギュラトリーサイエンスというものは、焦点がいま一つボケているように思われるかもしれない。色々なことが含まれるのだし、だから色々なテーマに発展するのだと思う。その時のカレント、トピックスを持ってくることもできる。生物製剤だって何だってレギュラトリーサイエンスの対象になるのです。情報公開のありかただって、どこまでオープンにすべきなのかを、ここで議論できるのですよ」
村重
「公開情報があるならディスカッションが成立するでしょうけれど、守秘義務とか言われて情報が隠されていたら成立しないのでは」