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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼4 高畑紀一・細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会事務局長


村重
「定期接種化が進まない一番根っこの所に、無過失補償制度や免責制度がないということがあると思います。もし免責とか無過失補償がきちんとできたなら、今までのように役所が頑なに法定接種に持って行かせない、法定接種に加えることにすごく消極的だったわけですけれど、そこで抵抗する理由がなくなると思うんですよね。打たないで病気になって後遺症が残ってしまうような方たちがいて、それをワクチンで防げるという、すごく大きなメリットがある。一方で、ワクチンを打つことによって、もの凄く稀ですけれど、メリットに比べると少ない数ですけれど副作用もゼロではないから、ちゃんとその人たちもみんなで支えようということができれば、みんながハッピーになると思います。そうなれば法定接種だ任意接種だ、という線引きをするんじゃなくて、できるだけ広く使っていただくためにきちんと接種スケジュールに組み込んでいくことができると思うんですよね」

高畑
「薬の薬害のコントロールの仕方、対応の仕方とも共通すると思います。ドラッグであれば効能効果に対して副作用がある。ワクチンであれば予防と言う効果に対して副反応がある。その二つと言うのは必ず表裏一体であって、どちらか片方だけということはあり得ないものですから、その二つをうまくコントロールしていくことが求められていると思うんですけれど、日本の歴史を振り返ると、副作用が出てコントロールができずに薬害事件になると、もう副作用のコントロールにしか目が向かない、ワクチンも副反応が出るとそちらにしか目が向かないという状態がずっと繰り返されてきたと思います。それを変えるいい機会に来ているんじゃないかなと思います」

村重
「データがないから、きちんと冷静な議論ができないんだと思うんですね。ちゃんとデータベースを公開して、レセプトデータとか、副作用の報告を集めたデータベースとか、既存のデータベースがたくさんあるのですから、それを生かしてきちんと公開して、皆さんが病気の起こる頻度がどれ位で、ワクチンを打ってこれが防げる、こんなにメリットがあるというのを数字で見えるようにする、それと、そのワクチンを打った後の副作用と言うのも、広く使っていただきながらきちんとモニタリングして、じゃあどれ位の頻度で副作用が起きるんだろうかということも、両方数字を出して、メリットはこれ位、デメリットはこれ位と数字を出して議論できるようになると、もう少し皆さん冷静に判断できるでしょう。行政側も副作用とか副反応のネガティブな部分にばかり気を取られるんではなくて、両方の数字を見ないといけませんし、打つ打たないの判断をする親御さんも両方の数字を見たら、納得して受けられるじゃないですか」

高畑
「本当にデータが足りない、整っていない、公開されていないというのが、大きな障壁になっているというのは実感しています。細菌性髄膜炎についても、私たちが当初厚生労働省へ行って定期接種化してくれと言った時も、ワクチンの有効性も分からない危険性も分からない、その検証をこれからスタートしますという話だったんですね。20年前にはアメリカで導入されていて、10年前にはWHOが勧告を出していたものに対して、なぜ今になって、すべてのデータ収集から始めなければならないのかということが非常に疑問でした。これは細菌性髄膜炎に限ったことではありません。医療全体として改善しなければいけないことだと思います」

村重
「そうですね。今からデータを集めるとよく役所は言いますけれど、過去のデータベースがあるわけですから。公開してないだけですよね。そういう今までの貴重なデータをどうして活用しないのかと凄く思いますね。アメリカではワクチンの無過失補償と免責制度は1988年にもうできているので、たぶんその前に今の日本と似たような状況があって、ワクチンを打てない人がいたり、メーカーがリスクが高いからここでは作らないというようなことがあったんだと思うんですね。相当、議論を重ねてできてきた制度だと思うので、日本も全く同じものにするかは色々と考え方があるとは思いますけれど、日本でもメリットが大きいからみんなで打つんだけれど、その分副作用が出た人はみんなで支えて行くんだという、そういう概念を日本の人たちもちゃんと考えて議論できるといいですよね」

高畑
「そうですね。無過失補償制度であったり、免責制度であったり、海外からのワクチンを導入しやすい、なおかつ国内企業の競争力を高めていくという政策というのは大切なことだと思いますし、制度をつくって運営していくことは不可欠なことだと思うんですね。それと併せて接種を受ける側、国民の意識というのも変えていく必要があるんだなと思います。

自分自身がまさに、国が言っていることはすべて正しい、お上が言っていることはすべて正しい、間違いがないという考え方をしていましたので。基本姿勢はそれでもいいのかもしれませんけれど、やはり自分で疑問を持ったら、インターネットだったり色々アクセスできるツールが発達してきていますので、自分で考えるという癖をこれから付けて行くと、本当の意味での民主主義につながりますよね」

村重
「そうです。お上の言っていることが必ず正しいとは限らないので、そこはデータを見て、皆さんが、ちゃんとご自身でデータを見て、判断材料を持った上で、お上の言っていることは正しいのかどうか、一人ひとりがそれぞれ判断していただきたいと思いますね。数字を出して議論すれば、それに対する判断というのは人によってちょっとずつ違うかもしれないですけれど、でも元にある数字というのは、データを公開していけば、そこがブレることはないのです。その数字に対してお上が何らかの解釈を加えてこうですよと、それが今はたぶん法定接種はここまでですよというのが、それにあたるメッセージなのかもしれないですけれど、そういう解釈が加わる前のデータ、生の数字というのをみんな一人ひとりが共有して考えられるようになるといいですね」

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