村重直子の眼4 高畑紀一・細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会事務局長
高畑
「ワクチン接種を推進する立場で活動していると、どうしても逆の慎重な意見の人たちとも接触することがあるんですけれど、その中のごく一部だとは思いたいんですが、元のデータ自体が違ってしまっているという方というのもいらっしゃるんですね。事実は事実として共通の認識を持ったうえで、でもメリットとデメリットの考え方が違うというのは、これは価値観なのでやむを得ないと思うんですよね。でも、元のデータが全然違ってしまっている、事実認定の部分が違っているということが往々にしてあるので、それは辿って行くと情報公開の在り方が非常に十分じゃないということにつながります。ある意味不毛な議論につながってしまいますので。データと言うのはどんどん出してほしいです」
村重
「データも数字も一つではないので、たくさん色々な数字を見て、そのバランスを見て、副作用頻度というのはこれ位なのかなと、いくつかの分母と分子があって確率がある、そういう数字もちょっとずつバラつきがありながらも、色々なデータをたくさん見て行くと、でも大体この辺なんだなというバランスを取った見方ができるじゃないですか。そういう形で、たった一つの数字とか、たった一つお役所が言っている解釈とかに縛られずに、信じ込まずに、ある程度バランスを保ちながら、他の人はどう言っているのかなとか、他の調査や研究結果はどういう数字があるのかなとか、そういう全体を見渡しながらバランスを持って判断できるといいですよね。でも、きちんとデータベースが公開されて、色々な数字がたくさんたくさん出始めると、たぶん皆さん、こういう数字もあるんだ、ああいう数字もあるんだというのが分かってきて、慣れてくると思うんですよね」
高畑
「大雑把な乱暴な言い方になるかもしれないのと、他国がどうか分からずに言いますけれど、日本人全体としてマクロのものの考え方とミクロのものの考え方の切り分けが凄い苦手ですよね。それって、正しい判断材料が提示されたうえで訓練されていくべきものだと思うので、それがなかったから未成熟だったということもあるんじゃないでしょうか」
村重
「本当にそうですね。今まで役人の側は全然数字を出してきませんでしたから。元の情報は開示しないで、役人が決めたことだけを発表して、国民は黙ってそれをそのままやっていればいいんですよ、という、それこそパターナリズムでずっと来ているので、皆さんあんまりそういうデータとか数字を見たことがないし、数字が示されないことに対してあまり不思議に思ってないですよね。そこは数字がないんじゃなくて、数字があるのに公開されてないんだ、公開するべきだという風に皆さんも思えるといいんですけれど」
高畑
「数字を見ると拒絶反応を示す方もいますからね。そういう意味では、昨年お医者さんの中でも話題になったレセプトのオンライン請求義務化についても、私は非常に複雑な思いがあります。レセプトのデータ自体がどれだけ良質なものかという議論はあるにせよ、今の日本の現状からすればないよりはあった方が絶対にいいものなんですよね。だから私は患者会の人間として、それは集めてほしい、活用してほしいという思いは持っているんですね。一方でオンライン請求の義務化というあの手法がそれに資するものだったかと言うと、あれだけ現場の先生たちの反発を食らったわけですから、非常にマズイやり方だったと思います。何のためにやるのかを考えて行けば、自ずからやり方というのは見えてくると思うのに、ああいうことをやっちゃうと進むものも逆に進まなくなっちゃうので、今回の顛末は誰のためにもならないと思いました。非常に反省してもらいたいです」
村重
「レセプトデータは、仰ったように100%完璧なものではないですけれど、ないよりはあった方がいい、公開した方がいいということですよね。既に既存のデータベースがあるので、紙で提出されても、データベースにあるものを公開すればいいんです。役人はいつも、これから新しく集めますって言うんですけど、その前に既存のものをそのまま出せばいいじゃないかと。誰の労力もかからず、まあちょっと整理してからじゃないと出せないというのはあるかもしれませんけれど、今から新しく作る労力と時間とを考えたら既存のものをそのまま出せばいいじゃないですかと、いつも凄く思いますね。だからレセプトデータも不十分ではあるにせよ全部出すと。あるものを出すと。それで、何が足りないかとか、何をもっとよくしたらいいかとか、出してみてからじゃないと議論できないのに、まだ不十分だから出さないというのはおかしいと思いますね」
高畑
「その類の話は多いですよね」