村重直子の眼17 小田知宏・発達わんぱく会理事長(下)
村重
「全国展開や世界への輸出にも眼を向けておられるとか」
小田
「国立がんセンター中央病院の院長だった土屋さん(了介・現癌研顧問)が、日経新聞の経済教室に書かれた『医療の産業化』という記事を読んで、まさに僕は療育の産業化をしたいんだと思いました。療育はまだまだサービスの質が低くて、もっと高くなる余地はたくさん残していると思っていますし、そこで働く我々の待遇も低いと思っています。サービスの質を上げて、そこで働く人たちも一生安心して仕事に打ち込めるような、そういう仕事にしていくためには、産業化が必要不可欠だと思ってます。今までの障害福祉というカテゴリーの中で、国から規制された押しつけられた形でやってきたと思うんですけど、これからはもっと民間の力、民間の活力を生かして、産業として療育の業界をつくっていきたいなと思っています」
村重
「それによって、療育する側も受ける側もハッピーになるということですね」
小田
「それに至るには血のにじむような努力の連続だとは思います。今までのように守られてきた業界、国とか規制に守られてきた業界じゃなくて、自由競争で。当然競争の中にルールはあるんですけれども、競争の中でもっともっと我々が努力をしてよいサービスをできるだけ安価に提供していくということが産業化ということだと思います。産業として一つの柱にするためには、ボーダーレスな世界になってきていて、日本で日本の会社が得意なところは日本人がどんどん経営資源を投入してやっていくし、苦手な所は海外に任せる時代になる。その中で、やはり日本の療育を、そこで働く人をもっといい待遇でもっとということを考えると、全世界の人たちに提供できるようになっていけば、もっとサービスの質も上がるし待遇も上がる。逆に言うと、世界に負けるとか、負けると分かっているから国内だけでドメスティックにやろうというのは、この例えがよいのか分かりませんが、農業とか漁業とかと同じように先が見えていると思うんですね」
村重
「医療もそうですね」
小田
「そうなんですかね」