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ニュース〜医療の今がわかる


 海の向こうの米国を見ると、オバマ政権がNIHの長官にゲノム研究のリーダーであるフランシス・コリンズを配したということにも表れているように、国家戦略としてゲノム研究に力を入れていることがよく分かりますし、ゲノムをキーワードにして、今後の薬の開発、あるいは薬の使い分けが進んでいくと思います。ところが日本の総合科学技術会議は、ゲノムに対する評価があまりにも低すぎたというか、ゲノム研究が医療に与えるインパクトを評価できる人がいなかったのです。

 フランシス・コリンズが今年のアメリカがん学会の時に紹介していましたが、NIHには薬をつくるためのシステムが整備されています。例えば、ある標的分子が見つかった時に、アッセイ系さえ作れば、それをもとにハイスループットで40万化合物から薬剤として働きそうなものをスクリーニングするシステムが、4つ動いています。それらの物質をもとに最終的に薬まで持っていくさまざまな支援システムもできています。もはや、製薬企業だけが薬を作る時代ではなく、国をあげて創薬に取り組んでいます。そのような観点からすると、日本も国家戦略的として薬を作る方策をちゃんと作って行かないと、現状はあまりにも無策で、製薬産業の将来は暗いように思います。

ゲノム 失われた8年

 世界的に見れば、「ゲノム医療」というのは大きなキーワードになっていますし、パーソナライズド・メディスン(オーダーメイド医療)という考え方も必然になってきています。今は、薬を開発することと、その過程でどんな患者さんにその薬を使うかを区別していくことはワンセットと考える時代です。薬剤開発と同時並行で、オーダーメイド的な利用法の確立が求められているわけです。プロテオミクス研究ももちろん重要ですが、人間の多様性を考えた場合、ゲノムというのは0・1暗号として単純に情報処理できるので、大量の情報処理に対応できやすくなっています。ゲノムを使った薬の使い分け、あるいは遺伝子の変異を使った薬の使い分けというのが、がんではかなり広く実用化されてきていると思います。がんの世界では、万人に対応できるブロックバスター薬剤などできない前提で薬の開発をしていく時代になってきています。欧米でがん治療薬開発に携わっている人に話を聴くと、トランスレーショナル・メディスン、分子標的治療薬、パーソナライズド・メディスンという概念が揃っていてあたりまえという考え方になってきていますが、日本の製薬企業は、新しいコンセプトに乗り遅れていると思います。

 また、だんだんと遺伝子多型情報が整備されてきて、遺伝子診断に基づいて副作用を回避するという医療が、かなり急速に広がると思います。これは患者さんのQOLをよくするという意味でも、無駄な医療費を削減するという意味でも非常に重要ですから、やはり健康医療対策として、もう少し注力していく必要があります。

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