「医療の質」の調査、いまだ先が見えず
■ 「クリニカルリサーチはDPCと全然関係ない」 ─ 分科会長
[松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)]
内容を教えていただきたい。2号(診療)側からの指摘事項として、「クリニカルリサーチにおけるDPCの弊害の調査」という項目が挙がっているが、これは具体的にどういうことだろうか?
[西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
企画官、お願いします。
[保険局医療課・迫井正深企画官]
この点については、今後、中医協でご議論いただく内容だろう。
事務局(保険局医療課)でも、「クリニカルリサーチにおけるDPCの弊害の調査」というものが、どのような趣旨で提起されているのか、少し整理が必要だろうと理解している。
[西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
私も、これを(中医協の嘉山委員から)ご指摘いただいたとき、その場にいたのだが、「DPCとは全然関係ないんじゃないか」と私はお答えした。
また、これが出てきた。
そのとき、(嘉山委員は)日本のクリニカルリサーチの数が減少したということで、「現在では中国に負けるような形になった」と......。
▼ 不満そう。そもそもの発端は、昨年9月のDPCヒアリングだろうか。後発品の使用割合が低い山形大病院をヒアリングに呼び付け、西岡分科会長が「病院として恥ずかしい」などと責め、オブザーバーの邉見公雄氏(全国自治体病院協議会会長)が「国策に反している国立大学」などと非難した。(詳しくは山形大病院は、「国策に反している国立大学」? ─ DPCヒアリングを参照。
その後、政権交代に伴う中医協委員の変更があった。当時、山形大学医学部長を務めていた嘉山孝正氏(現在は国立がん研究センター理事長)が10月30日から診療側の委員に加わった。 こうして迎えた"直接対決"が昨年11月4日の中医協・基本問題小委員会。西岡分科会長の説明を嘉山委員がさえぎり、DPCの問題点を述べた。ここで出たのが「クリニカルリサーチ」という言葉。嘉山委員はこう述べた。
「現場の声を出させていただきますと、DPCをやれるような、(DPC)データを出せるような所は問題ないんです。ただし、これからまだ(DPCに)入ってくるであろう所がある。全部、DPC(の網)を日本中にかけようとしているわけですから、方向性としては。そういう点で困っているような所もあるのではないか。もう1つは、先生がおっしゃるように、先端の所でやることは先端の所でやりなさいということじゃなくて、慶應の前医学部長の北島先生も内閣府で......。
クリニカルリサーチが非常に日本は落ちているんですよ。クリニカルリサーチというのは、いわゆる一般の医療の中でも日常的にやっていかなければならない研究なわけですね。研究がかなり落ちている。その良い例がですね、医学界の最高の雑誌である『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』で昨年度と一昨年度、がんに関する日本のクリニカルリサーチはゼロです。これはもう、我々としては大ショックだった。それだけ現場がもう疲弊している。疲弊しているのは人間的なもの、ソフトの面もあるのですが、ハードの面もある。つまり、医療費が出て行っていない。従って、クリニカルリサーチ、つまり動物実験じゃなく、人間を相手にしたリサーチができない。ですから北村先生、人間を相手にしたリサーチができないと、薬が開発できないんですよ。日本の医療産業が負けているのは、人間を相手にしたリサーチができないからです。その1つの足かせになっているのがDPCだと、現場で、至る学会で出ているんですよ。そのことにご配慮いただかないと、そういう医療費の配分をしないと、日本が世界から取り残されていくと思いますので、その辺にご配慮願いたい」
(詳しくは、こちら、厚労省の議事録はこちらを参照)
【目次】
P2 → 「DPC制度に係る当面の課題等」 ─ 分科会長説明
P3 → 「クリニカルリサーチはDPCと全然関係ない」 ─ 分科会長
P4 → 「終わったと思ったが、また出てきた」 ─ 分科会長
P5 → 「診療ガイドラインを100%守る施設はとんでもない」 ─ 山口委員