子ども亡くす親の気持ち分かり合える機会が減ってきた―細谷亮太聖路加国際病院副院長
■小児がん治療の劇的な進歩

小児がんは薬を使い、大人のがんは外科療法を使います。それは転移が最初からあるかないかの違いです。小児がんは最初から飛んでるのが分かってましたので最初は治せなかったんです。私が生まれるこの年まで、治す手立ては全くありませんでした。一つのターゲットとして、白血病を治せるようになるとしたら他のがんも治せるだろうとパイオニアの人たちは考えていました。そういう単純な発想が大事だと思いますが、最近はそういう単純な発想がだんだんなくなっていっているように思います。子どもに一番多い急性リンパ性白血病を治せるようになったら他のものも引っ張られて治るようになるんだろうと考えられ、みんながこれにかかって治そうとしたんです。その結果、1990年ごろにはもう8割近くが治るようになってきました。それに引っ張られるように他の小児がんも治るようになってきて、全体で7、8割の病気が治るようになってきました。でもなかなか治らないのは脳腫瘍、これはまだまだ難しいところにあります。でもそのうち治ってくると思います。
小児がんは進んでいても、全部腫瘍を取りきれなくても治すことはできます。私達が研修を受けていたところ、その頃僕の先生は「お気の毒に。お宅のお子さんの病気は残念ながら治すことはできません。一時的に良くなることはあるけども、最終的にはだんだん治らなくなって亡くなっていきます。でも交通事故であっという間に連れていかれるのに比べたらずいぶん余裕があって、その間にどんなことができるというのを評価して、何とか頑張って下さい」という話をしていました。でも今私達は、「7、8割は治せる病気だから、とても大変だけど頑張って治しましょう」という話をお母さんお父さんに言えるようになりました。それが何のおかげかというと、1948年にハーバードにいた小児がん治療のパイオニアのファーバーという医師が、抗がん剤を使って小児がんを治そうと思ったのが始まりです。(中略)それから10年に1回ぐらい、エポックメイキングな小児がんの薬ができるようになります。どんどん成績も上がりました。