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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼13 大西睦子・ハーバード大学歯科医学校研究員(上)


村重
「お国柄が表れていますね。ところで一度話を戻しまして、どうしてアメリカへ行こうと思われたのか教えていただけますか」

大西
「私は元々血液内科医で、とくに幹細胞移植を中心に臨床医として働いていました。大学院の時の研究は、臨床検体を用いて移植後の免疫回復を調べるというテーマでした。実際、臨床検体を集めることがかなり大変だったのです。そういう点で、アメリカは臨床研究を行うシステムがかなり進んでいて、私はボストンのハーバード大学が推進しているナースヘルスというコホート研究を勉強させて頂きました。30年以上も続いている世界最大規模コホート研究ってどうやってサンプル集めるのかなとか、インフォームドコンセントをどうやって取るのかなって、アメリカのような広い国でどうやって長期にフォローアップしているのかという点がとても興味があって、きっかけはそれでボストンへ行ったんですけど」

村重
「日本とどんな所が違いましたか」

大西
「かなり違っていました。私は特に、インフォームドコンセントや同意書は、具体的にどの程度厳密にどのような文章で得ていて、データマネージメントはどうなっているのかとても興味がありました。驚いたことに、インフォームドコンセントや同意書はとてもシンプルで、超大規模コホート研究に参加するための、みんなが理解できるようなシンプルでわかりやすい承諾書に、しかも時代が変わっても通用するような内容でした」

村重
「それは血液検体を集めるコホートなんですか」

大西
「血液だけじゃなくて、口腔内粘膜や尿のサンプルも集めます。さらにコホート追跡中、対象者にがんが発症したとき、インフォームドコンセントに同意を得られた方から、病歴、病理記録および病理組織を集めます。ナースヘルスコホート研究では、健常者ボランテイアの看護師さんを対象としていて、2年に1度アンケートにて食生活、喫煙、服薬歴等の日常生活習慣などを調査します。例えばミルクは何%のミルクを1日どのくらいの量飲んでいるかなど、どのような野菜や果物をどのくらい食べているか、どんな薬をどのくらいの期間服用しているかなど、かなり細かいアンケートです。でも対象者が看護師さんなので、アンケートの必要性や意味を十分に理解して、丁寧に質問に答えて頂くことができます。そしてアンケート調査によって得られたライフスタイル等のデータと病気の関係を総合して統計解析し、病気の予防法を検討しています」

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