勤務医の疲弊、無力な中医協
■ 中医協で労基法が議論されない理由
社会保障費の抑制策が吹き荒れる中、「明けなし当直で連続36時間」とも言われる勤務医の労働環境が問題になっている。労基法に違反するような状況が放置されていると聞くが、中医協でそこにメスが入ることはない。「医療課の所管ではない」と言えばそれまでだが、指摘する委員がほぼ皆無であることも理由に挙げられる。
中医協の診療側委員は、勤務医の立場を代弁するというよりも病院経営者の立場から発言することが多い。労基法の順守を強制するような仕組みが導入されてしまうと、当直する医師がいなくなったり時間外手当を余分に支払う必要が発生したりして病院経営者が困ってしまう。これは、中小病院が多く加盟する病院団体の代表者らにとっては認められない。
そのため、診療報酬を医師に直接支払う「ドクターフィー」の導入に賛成するのは嘉山委員だけで、中医協では却下されている。病院経営者の頭の上を飛び越えて診療報酬を医師に直接払うなど、病院団体の委員が賛成するはずがない。もちろん、厚労省、支払側、公益委員も反対している。
「医療は医師だけで成り立っていない」と支払側は言う。それも一理ある。ならば、医師以外の職員の取組や技術を評価するのかといえばそうではない。「チーム医療は評価が難しい」などと言う。
10年度改定では、多くの職種が患者の栄養管理を行う「栄養サポートチーム(NST)」、医師や看護師、臨床工学技士などが連携して人工呼吸器を管理する「呼吸ケアチーム」を評価する加算などが新設された。しかし、毎度おなじみの「要件が厳しくて取れない」との声が既に出ている。
【目次】
P2 → 当直が負担、「主観的なお答え」
P3 → 中医協で労基法が議論されない理由
P4 → 調査できないのは病院管理者のせい?
P5 → 労働時間の調査は難しい
P6 → 「医師1人あたりの患者調査」で逃げ切り
P7 → 「医療崩壊」を阻止できない理由