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勤務医の疲弊、無力な中医協

■ 「医師1人あたりの患者調査」で逃げ切り
 

 勤務時間の調査は診療側委員が求める「医療機関のコスト調査」にかかわるが、要望したのは嘉山孝正委員(国立がん研究センター理事長)だけで、病院団体の委員から"援護射撃"はなかった。病院経営者の立場を代表しているので勤務医の労働時間を調査されては困るのだろう。

 こうした病院団体の後ろ盾があるので厚労省は逃げ切りモードだが、診療側で日医に代わる発言力を手にした嘉山委員の要望をスルーするわけにはいかない。9月24日の中医協・DPC評価分科会で、「医師あたり患者数等の動向調査」と称して、こう提案した。

 「在院日数の短縮等に伴い、勤務医1人あたりの業務量が増大していないか、実際に従事した医師数と実施件数等が特定可能な診療内容に関して実施状況の調査により評価を試みる」

 勤務時間ではなく、医師1人あたり何人の患者を担当しているかを調査するという"妥協案"だった。これなら簡単にできるはず。中医協の検証部会で既に実施したこともある。

 問題は救急医療の調査だった。中医協の「医療機関のコスト調査分科会」でも救急医療を外して調査しているが、本当に不可能な調査なのかは分からない。勤務医の負担のトップが当直であることを受け止めるなら、夜間救急に関わる時間なども含めて調査しないと不十分だろう。

 しかし、この日の分科会では「救急医療は調査が難しい」という意見で一致した。救急専門の医師を配置している病院はほんの一部で、多くの病院は内科や外科の医師が救急を兼任しているので調査が難しいらしい。厚労省の資料には、「医師数の特定が難しいもの」という項目に「救急医療に従事する医師数」と書かれていた。


【目次】
 P2 → 当直が負担、「主観的なお答え」
 P3 → 中医協で労基法が議論されない理由
 P4 → 調査できないのは病院管理者のせい?
 P5 → 労働時間の調査は難しい
 P6 → 「医師1人あたりの患者調査」で逃げ切り
 P7 → 「医療崩壊」を阻止できない理由

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