勤務医の疲弊、無力な中医協
■ 労働時間の調査は難しい
8月25日の中医協総会で、嘉山孝正委員(国立がん研究センター理事長)は医師の勤務時間や業務内容などを正確に把握する「タイムスタディ調査」の実施を求めた。
「私が大学にいた時に、全国の国立大学のタイムスタディを一斉にやりましたが、一気にできます。(西岡)先生、大変だとおっしゃいましたが、先生も医科歯科の病院長をされたので、あの頃、確か私と一緒に机を並べていたはずなんですが、タイムスタディをやったはずです。文部省がやったんです。タイムスタディの中身をちゃんとしておかないと、本当の労働時間が出ない。教育も一諸に入ってしまうことがある。それはオーバータイムになります。先生は先ほど『タイムスタディは大変だ』とおっしゃったんですが、医師は自分のことですから、かなりきちんとすぐにやってくれます。タイムスタディを見ないとやはり勤務医の労働が増えたかどうか分からないと思うので、意見として中医協の総会に出したい」
しかし、DPC評価分科会の西岡清会長(横浜市立みなと赤十字病院長)は、「国立大学で文部省が旗を振ったからみんなやむを得ずできただけであって、一般病院でこれをやれというのは非常に難しい。実際にご協力いただける施設の労苦がかなりある」と反論した。
今までのパターンならこれで「ゲームセット」になるはずだったが、嘉山委員は引き下がらなかった。続く9月8日の中医協総会で再びこう求めた。
「勤務医の負担軽減で最後まで抵抗されたのはタイムスタディ。本当に、タイムスタディ、そんなにやるのは難しいですか? 勤務医の負担はやはり質と量なので、タイムスタディをやっていただかないと議論にならないのではないか」
それでも保険局医療課の迫井正深企画官は、「勤務医負担の話はそもそも本体全体でやる議論。診療報酬本体でどういう調査をするかはまだオープンだということが私の理解です」と述べ、今回の調査はDPCの影響を調べるためのものであると逃げた。
つまり、入院期間の短縮などを目的とするDPCの影響を調べるための調査なので、勤務医の労働時間調査まで及ばないという理屈だった。
【目次】
P2 → 当直が負担、「主観的なお答え」
P3 → 中医協で労基法が議論されない理由
P4 → 調査できないのは病院管理者のせい?
P5 → 労働時間の調査は難しい
P6 → 「医師1人あたりの患者調査」で逃げ切り
P7 → 「医療崩壊」を阻止できない理由