がんワクチン緊急シンポジウム
影山
「腫瘍が小さくなるところだけ見たら効かない。ただ生存を延ばす観点ではあると考えている」
岡
「絶対に効くと思う。ある程度の腫瘍縮小や増殖抑制は見られる。ただ皆さんもご指摘のようにまだまだ不十分なところが大きい。ただランダム化して比較してはいないにせよ、シングルアームであっても、何もしないナチュラルコースでは起こりえないような経過が見られるのだから」
河上
「なぜ効くのか、あるいは効かないのかは重要。Aというがん抗原を入れたからといって、Aを攻撃するTリンパ球が増えて攻撃しているのかどうかは分かっていない。あるいは全く別の経路で効いている可能性もある。100例程度の臨床試験だと、次の100例では違う結果が出るということもよくある。臨床の立場では効果が出ているからよいではないかということもあるかもしれないが、療法をさらに改善するためにも、何が起きているのか、なぜそういう結果になったのか科学的な検証が必要だ」
会場
「前立腺がんの患者だ。手術して放射線治療を受けて今はホルモン治療をしている。もしホルモン治療が終わってしまうと、現代の医学だと様子見ということになるのだろう。だから、がんワクチンに多大な希望と期待を持っている。先ほどランダム化するという話があったが、私が受ける時には間違いなくワクチンの方に入れてもらいたい。その意味では、三大療法の前にやってもらえればいいのでないか。それから、がん登録が大切だと思う」
今井
「後半部はおっしゃる通り。国も気づいているようで平成18年にできたがん対策基本法にも謳われている。まだ実効性は持っていないが次第に解消に向かうだろう。もっと早くから使うべきというのも、おっしゃる通りで、実際に米国でも昨年の9月にそのような使い方をすべきというガイドラインが出ている」
河上
「科学的に見れば、なるべく早くやるというのが当然。しかしエビデンスのある標準的な療法がある時、それよりも劣るかもしれないものを先にやるのは倫理的に許されない。最終的には患者さん自身が選択することだとしても難しい」
今井
「多くの医者が感じていることだと思うが、がんというのは一人ひとり違う。その個性に合わせてやってかないとうまくいかない。その意味でも個別的医療の重要性は高まる一方だし、ワクチンもそのような考え方でとらえるようになるだろう」
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