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ニュース〜医療の今がわかる


会場
「今日の話はペプチドやプロテインをワクチンとして使うというものだけだったが、がんの免疫療法と言った時には、免疫細胞を使うものもあるはず。どれを選べばよいのか指標がない。患者はどうすればよいのか」

今井
「今言われたのはリンパ球をつくって移入する療法のことだろう。お金をいただいて治療を行うような医療機関がいくつかあって、免疫療法の中では比較的流布されていることは現実。学会でも、それに対してどうするのだという意見が出ないわけではない」

奥野
「河上先生が最も経験があると思うが、私も免疫細胞療法に期待して、米国で1983年から84年ごろにやり始めた。結論から言うと、一時的に効果が見られることもあるがなかなか思うようにいかない。そもそも先ほどの河上先生のお話にもあったように、腫瘍中のがん細胞の数は10の9~10乗個もあるわけで、体に入れるリンパ球との数の論理から見て、がんに少しの打撃は与えられるだろうが大きな癌にとっては決定打にはならない。コストパフォーマンスの点から見て勧められないと判断した」

河上
「LAK療法というものをやっていた。リンパ球をインターロイキン2で刺激してやると、培養ではがん細胞をめちゃくちゃ殺す。ということで85年から私のボスだったローゼンバーグが100例ぐらいやったら効果ありという結果だった。しかし、仮説ではLAK細胞ががん細胞を殺しているはずだったのだが、どうもその現象が起きてないようだった。入れたLAK細胞がサイトカインを色々出したりとか色々な経路があるようだった。その後、また100例ほどやったら今度はあまり効果が出なかった。先ほども言ったようにAを入れたからといって必ずしもAが効いているとは限らないし、100例ほどでやっても本当に効いているかどうかは分からない。現在の判断としては、大きな集団で見た場合には、あまり効果は期待できないということになる。ただし個々に見た場合には、効いたんだろうとしか考えられないような患者さんはいる。だから免疫細胞療法が効くのかと問われた場合に、イエスかノーかでは答えられない。その辺りを患者さんが理解されて、対価に見合うものと考えるかどうかだと思う」

会場再度
「私は生物学がバックグラウンドにあるのだが、主治医が免疫療法についてほとんど何も知らなかった。自分で調べようと思って探したところ一般向けの本は何冊かあるのだが科学的情報が少ない。それならば医師向けのものをと思っても、最も新しいものが2004年のものだった。ここにいらっしゃるような皆さんで、医師向けの本を編纂してほしい」

今井
「皆、どうやれば効くのかというのを寝る間も惜しんで研究している。本に著しているのが間に合わないほどのスピードで進歩しているものではあるのだが、一般の人に対してきちんと広報することの必要性を痛感している。学会としてもアプローチを取っていかないといけないのかなと思っているし、今日のシンポジウムもまさにそういう発想で開いた。では、今度は安全性について、どのように考えるか。今日の発表では、皆さん概ね安全なものだとい考えていると受け止めたが、よろしいか。ちょうど今、和歌山県立医大の山上先生が着かれたので一言」

和歌山県立医大・山上裕機教授
「その前に、効くか効かないかというのは、臨床試験をやってデータを取らない限り言ってはいけないことだ。私は患者さんに対しても、効くとは絶対に言わない。副作用に関してだが、私たちの施設ではすい臓がんに関する医師主導治験で第一相試験をやった。単独ではあるが、captivationネットワークとして行ったものという位置づけでもある。18例中1例で十二指腸からの出血が見られた。しかしながら、抗がん剤と併用していたものであり、自然経過の中でも起こることから、ワクチンと因果関係があるかないか精密に検討して、因果関係はないと判断した。皮膚反応はある。発熱は軽度。ジェムザールとの併用で、ワクチン100例、プラセボ50例のRCTを現在実施している」

今井
「ワクチンは基本的にあまり大きな危険はないということでよいだろう。ただし絶対はないので、注意してやってかないとというのが、学会の常識となっている。地方で実際に患者さんを診ている先生方はいかがだろうか」

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