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「家族が強くなれば、施設も変わる」―認知症患者の介護家族の声①


――在宅におられる時に、ご主人も少しずつ病気を受け入れて行かれたのでしょうかね......。
 
それから、デイに行っても落ち着きがなくなったり、家にいても勝手に外に出たりするようになりました。外に出ようとするのを止めようとしたら怒ったり、蹴飛ばしたり、物が飛んで来たりするようになりました。夜帰ってきてからも出かけようとしたり、夜中の2時や朝の4時頃とか、目を覚ますと「今から行こう」と出ようとします。徘徊の症状がひどくなってきて、デイサービスの職員さんが私の疲れた顔を見て「在宅介護は限界だ」と思われたようでした。デイサービスに出かけてそのまま精神科病院に「保護観察入院」という形で入院しました。在宅介護を始めてから2年目のことでした。
 
 
■相談ないまま、施設から精神科病院へ
 
――そうするしかないような状態で、介護が大変でおられたのでしょうね。
 
当時は夫を入院させてしまったという自責の念と、でもその道しかなかったという思いがあり、苦しい毎日でした。それから1年近く入院していたのですが、前から入所の申し込みをしていた老健(介護老人保健施設)に入ることになりました。最初は夫も「ここはええ」と言っていたのですが、そのうちに「出たい」と言うようになりました。夫に暴力が出るようになったんです。でも夫は帰りたかっただけだと思います。夫が帰ろうとするのを職員の方が止めようとすると、夫は悪気が無くても職員さんが押さえる手を振りほどこうとして、それが暴力のようになったり、そういうことが重なって廊下の車いすを蹴ったり、色々あったと思います。そして他の入居者の方の怪我になると困るので出て行ってほしいと言われるようになりました。そして家族に何の相談もないまま、施設から病院への入院が決まっていたんです。
 
――ご家族に相談がないままですか?
 
施設から「病院の外来にお薬をもらいに行って下さい」と連絡が来たので施設に向かったら、医師から「明後日に入院が決まりました」と言われたのです。本当に驚きましたけど、でももう決まったことだから仕方ないのかなと思いました。ひどいと思うことや怒りはもう通り越してしまっていました......。出なきゃいけないと言われ、仕方ないのかなと......。入院する日、夫は以前精神科病院に入院していたことを覚えていて、どういうところかを覚えていたので、嫌がって入ろうとしませんでした。近くでウロウロしていたら、医師や看護師が探しに来られました。夫は嫌がって大声でわめいて暴れましたけど、大柄の介護士さんたちが数人で、前から後ろから夫を抱えて病棟に連れて行きました。その時の光景は一生忘れられません......。
 
――それは、あまりにひどい話ではないでしょうか。相談もないまま施設から病院に入院になってしまうなんて......。
 
それから10日間、「会える状態じゃない」と言われて、面会できませんでした。毎日電話をして状態を聞いていましたが、様子が分からなかったのでとても不安でした。その10日間、どういう状態だったのか想像すると、もう......。それまでは記憶力も少し残っていて会話も普通にできていたのですが、10日後に面会に行ってみたらすっかり元気がなくなっていて、別人のようでした。記憶力もなくなっている様子でした。私たちが来てもテーブルに向って椅子に座っていて、「来たよ」と言っても「うん」と元気なくつぶやくだけでした。
 
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