「慢性期にも十分なリハビリを」―認知症患者の介護家族の声②
■希望が見えたころに退院を迫られた
――ご主人が入院されている時は本当につらい時期だったんですね......。
でも私は、主人が今は寝たきり状態で動かなくても、絶対にもっとよくなると思っていたし、あきらめませんでした。2つ目の病院には5か月ぐらいいて、担当の先生はそのまま在宅に戻すつもりでおられました。でも看護師さんから、「奥さん、諦められないんだったらもう一軒病院を移って、そこから家に帰る方が気持ち的にも余裕ができるよ」と教えていただきました。それまではチューブ栄養だったのですが、「プリンを食べさせてみようか」と言ってくださって、主人が食べたんですね。そこからミキサー食ならいけるかもと試したら食べたので、希望が見えてきました。転院する前に車いすに乗る訓練もするようになりました。
――ご主人が病気になってから半年後、ようやく少し希望が見えてきたんですね。
3つ目の病院はリハビリテーション病院でした。そこでは本当によくしてもらって、「リハビリより先に」とお尻にあった褥瘡を直すために、チームを組んでかかってくれました。でも最初は3カ月しか入院できないと聞いていたので、早くリハビリを始めてもらいたくて先生に直接お願いしたりしました。それからは、ベッドからの起き上がり、車いすからの移乗や前かがみ、起立台にくくりつけて立たせたり......。毎日、午前と午後やっていました。スタッフの方もずっと付いているわけにはいかないので、付き添っている私が主人の様子を見て一緒にやっていました。「奥さんがいるからできます」と言ってもらえたこともあります。付き添えない家族もいるので、そこはよかったなと思います。状態が改善してきたので入院も6か月に延ばしてもらいました。最後は車いすに乗っていられるようになりましたし、気管切開も外れたんです。吸引の仕方も教えてもらいました。でも、医師や看護師さんたちはこれ以上よくならないと思っておられました。退院間際にリハビリに連れて行ってる時、「ご主人にはもうリハビリは要らないのに、連れて行かれて可哀相に」と言われたんです。とても悲しかったし、悔しかったです。でも、私は大事な夫に少しでも良くなってもらいたいし、今の体力や機能を維持してもらいたかったんです。動けなくなったら着替えとかもしにくくなるし、風邪もひきやすくなるだろうし。
――板垣さんはずっとあきらめないでおられたんですね。でもリハビリ病院は入院期間に制限があるので、今は長くても6か月までしかいられないですよね。
主人も6か月目になって少しずつ良くなってきていたのですが、その時に退院になって続けてきたリハビリが切られてしまうんです。慢性期は慢性期のためのリハビリがあるはずで、ずっと続けていけるようにしないといけないと思うんですよね。