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「慢性期にも十分なリハビリを」―認知症患者の介護家族の声②


■介護者には情報の場が必要
――板垣さんがそれだけサービスを活用して、長期間の在宅介護を続けて行かれるのは大変だったと思います。情報収集もご苦労されたのではないでしょうか。
 
初めてお願いしたヘルパーさんが色々教えてくださいました。介護者の家族の会があることも知って、そこで介護の方法や知識、いろんな人の話を聞けて本当に助かりました。体験談も聞けるし、自分の話も聞いてもらえます。役所の介護保険課からは、何も情報を教えてもらえなかったんです。「手引き」にもずらっと事業所の一覧があるけどどこが良いとは書いてないし、ケアマネジャーも知らなかったりするから、自分の手と足で調べたり、家族会に行ったりして、エネルギーを使わないと分からないんです。仲間うちの話が大事なので、情報が集まるところが家族には必要だと思います。私のこれまでの経験からでもやっぱり出会いだと思うんです。最初の病院でしてきたつらい思いも、今良い先生や介護者仲間たちに巡り合えていい介護をできていることも、出会いからでした。介護者にとって良い出会いを見つけられる場所があることが、大事だと思います。
 
――板垣さんが介護を続けられるエネルギーは、どこから湧いてくるのでしょうか。
  
自分でできることをとにかくやろう、結果は後から付いてくると思っていました。私は元気な時から本当に主人が大好きだったんです。私がこの人の奥さんでいいのかなと思うぐらい尊敬していました。私はつらい子ども時代を送っていて、義母に育てられたのですが殴られたり蹴られたりして、甘えられる人がいなかった。24歳で結婚して、初めて素直に甘えることができたんです。だから、私は主人が馬鹿にされたり、つらい思いをすることは耐えられないし、主人が良くなることを絶対にあきらめられません。
 
――今、介護をされていて心配なことはありますか?
 
私が明日倒れないという保証はないですよね。主人に慣れてくれている施設があってほしいので、退院後は月に1回ぐらいショートステイに行っていたのですが、主人がこんなふうになって(腕を上げて振り払うような様子)調子を悪くして帰ってきてしまいます。施設の方に聞いてみたら、夜中にオムツを変えようとしたら払いのけられたので、二人で抑え込んだら噛まれた、と言われたことがあります。叩くには叩く理由があると。主人が施設でどうされていたんだろうと思うと怖くて、それからは行っていません。でもどこか良い施設との出会いがないかなと思っています。
 
――もう長く在宅で介護をされていますが、ご主人の看取りのことはどんなふうにお考えなのですか?
 
主人の最期は絶対に家でみたいと、私が看取りたいと思っています。病院は、何か急な事態になったとして、行って状態が良くなるならいいですけど、管を付けて延命させるというだけなら行きたくないと思います。昔は主人の死については考えたくもなかったですが、今は落ち着いて考えられるようになりました。最期には石原裕次郎の歌を流したり、主人のカラオケの歌を皆さんに聞いてもらいたいなとか。いろんな方と関わって行くうちに、心にゆとりができて考えられるようになりました。胃ろうについても考えます。胃ろうにすれば長くは生きられますが、本人がつらいのは嫌です。でも私が主人をあきらめ切れるかなと、このままでもいてほしいと思うかもしれないし、葛藤しています。
 
――今も、考え続けておられるんですね。
 
看取る時は看護師さんや友達とか、何人かにいてもらいたいなと思います。今、一人で介護しているので怖いんです。独りぼっちだと怖くて救急車を呼んでしまうと思うから。でも今はこうやって介護者同士の仲間もいるので、全然怖くありません。在宅に帰ったらすごく楽でしたよ。好きな時にご飯を食べてお風呂も入れるし、仲間たちと勉強しながらお手伝いしながら、これからもやっていきたいなと思っています。
 
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