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治療が消える 治療を守る⑤

医療機器や医療材料の供給に関する構造的課題を探っていくコーナーです。

PMDA理事長に聴く

 デバイス・ラグの原因の一つとして医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査に関する問題点をいくつか指摘してきました。このような問題をどう考えているのか、改善の見通しはあるのか、近藤達也・PMDA理事長に聴きました。近藤氏は、国立国際医療センター病院(現同戸山病院院)で院長を務めた脳神経外科医。発足以来行政官出身者が就いていた理事長職に臨床医として初めて就き、改革に乗り出しています。

――国内で使える医療機器のアイテム数が欧米の半分しかないと報道されるようになりましたが、PMDAの審査が、どの程度関係あるというようにお考えでしょうか。

 ヨーロッパの場合は基本的に第三者認証(コラム参照)で、使う医師に結果とか責任を委ねてかなり自由に使えるようにしています。日本とFDA(米国)は国が審査しています。ですから、ヨーロッパに比べて、日本の審査が厳しいという指摘は理解できます。ただヨーロッパも、全部そればかりではないように変わりつつあると聴いてます。国民の健康を考慮した対策を取ろうという姿勢は基本的に正しいのでないかと思います。
 一方で、向こうで使えるものが、なぜ使えないんだというご意見も分かります。アメリカにも簡易的な審査があるようですし、日本でも人間の体の中に直接入れないとか、介入の少ないものについては、どんどん第三者認証に持っていくのが、アクションプログラム(コラム参照)の中に入ってますから、かなり改善するのでないかと思います。

――審査期間が長いという指摘は必ず出ます。

 そこを短くしようというのもアクションプランに入っています。新医療機器で申請前を12カ月、申請後を7ヵ月短縮する計画です。特に新医療機器と改良医療機器は、納得のいく審査期間にすることが肝要だと考えています。
 PMDAは、3つの方針を掲げており、その一番目が「世界のPMDA」です。国境を越えて基準をなるだけ共通化し、無駄を省いて大事なことだけやろうということです。二番目は「レギュラトリーサイエンス」(規制の科学)です。安全とか物事の基準は、どんどん進化します。新しい世界標準や世界基準を作ることに貢献していきたいと思っています。三番目が「産官学国民の責任ある連携」。物事の中心にいつも国民を置くということです。
 この3つの立場で、日本は諸外国と協調してやるべきなのかなと思います。そうすると審査に起因するラグもかなり減るんではないでしょうか。

――国際協調に関して、海外で承認されている機器類に追加治験や追加データを要求する必要性は何ですか。

 基本的には、日本人の体質とか、サイズの問題とかでしょうか。毒性なんかに関しては、どこまで開発国のデータを信用するかということになるのかもしれません。

――相互認証も視野に入ってくると思いますが。

 すべての国と相互という訳にはいかないでしょうが、少なくとも先進国どうしは互恵関係でなければと思います。

――審査の際の要求が予測不能ということも指摘されます。

 審査官によって違うじゃないかということは、よく指摘を受けます。当然のことながら統一した見解で、納得いく判断を出していかなきゃいけないと思います。審査官が少なすぎるというのも影響しているとは思いますので、平成20年度には35人だった医療機器担当者を毎年13~14人ずつ増やして平成25年度に104人体制に持っていくというのもアクションプログラムに入っています。
 医療機器の場合は、医薬品と比べても色々なものがあるので、基準の取り方は学問としても非常に多岐にわたります。その面で混乱する部分もあるのかもしれません。だけど、世界と共通化していく方向で考えていくと、どんどん突破していけるんじゃないかと思います。向こうで使われているのに日本で使えないというのは、よくよくの理由が必要かなと思います。

――抗生剤入りの骨セメントのように、医薬品と医療材料が組み合わさったものは、そもそも承認されないという話があります。

 医師として、そんなものが本当に要るのかなとは思いますが、薬事法でどちらかに分類するよう決まっているので、どちらにも入らないものを何とかしようとすると法改正が必要になるかもしれません。

――少し改良するだけで審査がやり直しになることへの批判も強いです。

 基本的に医療機器は日進月歩ですから、臨機応変にやっていくべきでしょう。でも一方で改良イコール良とは必ずしも限りません。そこを見抜けるように、国際的協調を強化して対応すべきことでないでしょうか。

――薬事承認と保険収載がほぼ一体運用されているために、人工心臓のように高価な治療法の場合、保険の側から承認側へ「承認しないよう」プレッシャーがかかっているのでないかという見方もあります。

 あるかもしれません。よく分かりません。あるとすれば、それはよくないですよね。薬事はあくまでも薬事。使っていいかの話ですから。
 薬事承認されたものを全部保険収載する必要ないのではと思います。医薬品でも、抗がん剤類のように高額のものまですべてを普通の国民皆保険の中で対応したら破綻してしまいます。高額医療の必要な人を助けられるような別の仕組みを考えていかないといけないかなと思いますね。

EUの第三者認証  製品がEUの法規制(EC指令)に適合していることを、複数存在する第三者認証機関のうち一つが認証すれば、CEマークの表示をすることができ、それぞれの国の規制を受けることなく域内では自由に流通・販売させることができます。このため最近では、日本製医療機器でも、最初に欧州から使用が始まるという例が少なくありません。
アクションプログラム  08年12月に厚生労働省が作成した『医療機器の審査迅速化アクションプログラム』のこと。審査人員の増員や審査基準の明確化、情報公開の充実、ローリスク製品群の第三者認証への移行などが盛り込まれ、既に実施に移されているものもあります。
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