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「食う」から始まる免疫

 前項で、同一の受精卵から分かれ、皮膚と粘膜という2つの膜に挟まれた領域に存在する細胞群を『自己』と定義しました。膜と関連づけて自己を定義したのは、非常に根源的な意味を持ちます。
 傷口などない限り基本的に物を通さない皮膚はさておき、粘膜は物が通りやすくなっています。ウイルスや細菌などに侵入を許す場合も、大抵は粘膜経由。なぜ粘膜があるのでしょう。皮膚のように丈夫なバリアで内から外まで全身くまなく覆うようにならなかったのは、なぜでしょうか。

生きるために

 実は生命体共通の性質として、自らの膜の外側がどのような環境であっても、膜の内側の状態を一定に保とうとする働きがあります。放っておくと外側からの影響を受けて変化してしまうので、エネルギーを使い物質を出し入れして内側の状態を維持しているのです。極論すれば、膜の内側の状態を維持することこそが生命活動であり、生きるということになります。
 動物の場合、これに必要なエネルギーを自分自身でつくり出すことができないため、食物から得ます。食物となるのは「他の生命体」です。

安全に食う仕組み

 つまり、動物が生きるということは、本来的に他の生命体を食わないと成り立たないものなのです。一方で、他の生命体を自らの膜の中に取り込むのは危険なことです。相手が中で暴れたり、中から逆に食われたりします。
 何億年もの食ったり食われたりを勝ち抜いてきた生命体が、現在生き残っているものです。安全に食う仕組みを獲得したものが有利だったことでしょう。この仕組みこそ、我々が免疫と呼んでいるものの始まりと思われます。
 そうした原始的な営みを今も見せてくれるのが、アメーバなどの単細胞生物です。彼らには、病原菌等を取り込んで消化してしまう「食作用」が備わっています。この食作用は、もちろん多細胞生物にも脈々と受け継がれています。
 私たちの体内にも、血液細胞の一種である「食細胞」というものが存在していて、単細胞生物と似たことをしています。体内に入り込んだ『非自己』を、呑み込める大きさだったら呑み込み、バラバラに分解してしまうのです。そして、これこそが免疫の始祖というわけです。

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