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研修医が見た米国医療10

大勢のSWが活躍 入院期間を短く

反田篤志 そりた・あつし●医師。07年、東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を終え、09年7月から米国ニューヨークの病院で内科研修。

 米国の入院期間は日本と比べてとても短いと言われています。一般病床の平均在院日数の統計を見ると、日本では19日、米国では5日程度と、3倍以上の開きがあります。大きな理由の一つに、米国のソーシャルワーカー(以下SW)が充実していることが挙げられます。
 私の働く病院では1病棟に1人、病院全体で64人のSWがいて、患者さんの家族背景・経済状態の把握、転院先の病院との交渉、書類の作成等、退院に向けて必要な手続きを一手に引き受けています。SWとの連携は入院初日から始まります。老人ホームからの入院、ホームレスの患者さんなどは、退院時にSWが必要になることが明らかですので、医師は早めにSWと情報を交換しておきます。そうすると、退院に向けてSWが準備を進めておいてくれるので、退院時になって慌てることがありません。
 SWと情報交換することは、研修医の大事な仕事の一つです。毎日午前中にSW、看護師長との病棟会議があり、この患者さんはいつ退院できそうか、退院に際してどういったサービスが必要か、といった情報を共有します。忙しい病棟業務の中で結構時間を取られるので研修医は嫌いますが、この会議が重要であることは言うまでもありません。患者さんの退院が決まると、研修医は真っ先にSWと話します。SWの関与が必要であるかどうかの確認をして、もしなければ晴れて退院です。SWの関与が必要な場合も、それまできちんと情報交換しておけば、ほぼ確実に翌日には退院できます。
 平均入院期間はその病棟の評価の指標になっていて、SWも看護師長も患者さんを早く退院させようと躍起です。研修医とSWの情報共有がうまくいかず、退院が不必要に1日でも延びた場合、研修医は非難の的です。主治医の一存で退院が急に決まることもあるのでので、とりわけ退院の判断に関して研修医は、主治医とこまめに連絡を取り、細心の注意を払わなくてはいけません。時にいつまでも判断してくれない主治医と、早く判断が欲しいSWの間で板挟みにあい、困り果てることもあります。このやり取りは主に2、3年目の上級研修医が務めますが、嫌な役回りであると同時に、腕の見せ所といった側面もあります。
 日本で働いていた頃、療養型の病院や老人ホームへの転院にはとても時間がかかりました。私が働いていた病院は今の病院の半分ぐらいの規模でしたが、SWが病院全体で3、4人しかいないためとても忙しく、書類のいくつかも医師が用意しなければなりませんでした。元々施設から来た患者さんをその施設に退院させたい場合、SWを通さずに、医師が直接転院先の医師に電話をかける方が手っ取り早かったです。また、新規の転院先を探すのには1週間以上かかるのも当たり前でした。
 日本で退院に時間がかかるのは受け入れ先の不足にも一因があります。次回は米国で退院した患者さんの行き先と、それに関連した退院日数のトリックについてお話します。

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