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65-1-1.JPGご存じですか?
お酒の強さからがんの発生、そして創薬に至るまで、ゲノムが鍵を握っていることが、身の回りにはたくさんあるんです。
監修/松田浩一 東京大学医科学研究所准教授

 新年会ラッシュもそろそろ落ち着いてきた今日この頃。年末年始は何かとお酒を飲むシーンが多かったかもしれません。でも下戸の人は、もっぱら食べる方担当だったでしょうか。いずれにしても、お酒に強いか弱いかが、どちらかの親に似ることは、なんとなくご存じの方もいるかと思います。まさにゲノムの仕業というわけです。
 前回、ゲノムはヒト一人分の遺伝情報の一揃えで、体のすべての細胞にDNAとして収まっていること、DNA上の遺伝子領域は、体が合成するたんぱく質のレシピの役割を持っていることなどを、お話ししました。
 レシピの文字にあたるものは塩基と呼ばれる化学物質で、塩基が鎖のように並んでDNAを形成しています。このDNAの塩基配列が様々なきっかけで置き換わったり、割り込んだり、なくなってしまうことを変異と言います。お酒に強い・弱いも、アルコールの分解に関わる遺伝子のDNA配列のうち、たった一つの塩基が置き換わっていることで決まってくるのです。
 実はヒトのゲノムは30億個もの塩基からなるのですが、そのうち3百万~1千万個は個人によって違います。この違いを「遺伝子多型」といい、よく知っているABO式血液型もその一種です。なかでも、一つの塩基だけが置き換わっているものは、「一塩基多型(SNP=スニップ)」と呼ばれています。
 お酒への強弱は、SNPの身近な例。たった1カ所の塩基の違いで、体質が真逆になってしまうんですね。他にも様々な体質が、多様なSNPに依存しています。

ゲノムで分かる なりやすい病気

 遺伝子多型は病気の発症にも関与しています。
 「遺伝病」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。通常、1カ所の遺伝子の違いだけでも発症し、親から子供へと受け継がれる病気です。「単因子遺伝病」と呼ばれ、血友病とか筋ジストロフィーといった例があります。
 では、がんや糖尿病、動脈硬化、高血圧症、アルツハイマー型認知症など、ありふれた病気はどうでしょう。実は、これらの発症には、遺伝と環境が複雑に絡んできます。しかも、たくさんの遺伝子が関わるので、「多遺伝子性疾患」「多因子病」とも呼ばれるのです。
 それでも、これまでにアルツハイマー型認知症や乳がん、高血圧に関わるSNPなども見つかっています。特定のSNPを調べることで病気のなりやすさがわかる時代が、まさに到来しつつあるのです。

ゲノム変異がヒトをつくった?

 私たち人類、ヒトは、サルから進化したとの認識が一般的ですよね。正しくはサルと共通の祖先を持っているというべきでしょうか。
 進化とは何か。それに答えるのもゲノム変異です。
 DNA変異は実は絶えず起きています。しかしほとんどは修復されて、たんぱく質合成に影響が出ないようになっているのです。ただしまれに変異が修復されず、なおかつ生死に関わるものでなかった場合、そのままDNA中に蓄積されていくこともあります。
 そうした変異が卵子や精子のDNAに生じると、子の全細胞のDNA(=ゲノム)が変異を受け継ぎ、親と異なる見た目や性質が現れたりするのです。あるいは、子から子へ幾世代も受け継がれ累積して、あるとき不意に出てくることもあります。
 この繰り返しこそが、進化のプロセス。DNAの目に見えない小さな変化が、サルからヒトへという目に見えて明らかな進化をもたらしたんですね。

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